国立西洋美術館の
「スウェーデン国立美術館
素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」に行ってきました。
スウェーデン国立美術館の素描コレクションから、選りすぐりの名品約80点が展示されています。
本展、チラシはなんと3種類!(‘ω’)ノ
素描だけを集めた展覧会なのでカラフルな作品は数点しかありません。
華やかな油彩画などは1つもない渋めの展覧会ですが、画家の筆運びがよくわかるものばかりで私としてはとても楽しかったです。
自分で絵を描く方などは、参考になるようなものがたくさんあるかもしれません。
この記事では美術展の備忘録として作品写真と共に展覧会の内容と感想を書いています。 ネタバレを避けてグッズなどの展覧会情報だけを知りたい方は「素描コレクション展 情報」までジャンプしてください。 |
「素描コレクション展」 感想
展示構成
本展では、導入でまず「素描とはどんなものなのか」が解説されます。
ヨーロッパにおける素描の「ざっくりとした歴史的流れ」や「代表する画家」などを紹介されるパネルがあり、また昔の画家たちが素描を描くのに使った羽ペンやインクケースなどの実物も観ることができます。
そして、本編ではヨーロッパの美術大国である4か国の素描コレクションがお目見えです。
- 第1章 イタリア
- 第2章 フランス
- 第3章 ドイツ
- 第4章 ネーデルラント
1か国ごとに大きな部屋が用意され、四方の壁に大小さまざまな素描が並んでいます。
全作品で撮影OKだったので、すべて撮りたくなる衝動を抑えて厳選するのが大変でした。
各国から私のお気に入りの作品を数点、思い出として残しておきたいと思います。
写真に額縁を含めるか悩みましたが、基本的にシンプルな額縁だったうえ小さな作品も多いため、素描の部分をアップしたものを載せることにしました。
イタリアの素描・3選
第1章はイタリア。
ルネサンス、マニエリスム、バロックと世界の美術の中心地であり続けた国です。
15世紀ルネサンス期のイタリアは、紙の普及に伴って制作される素描の数が飛躍的に増加したそうです。
また、より複雑な表現が求められたことから、制作するにあたって素描段階から入念に検討する必要もありました。
この《空飛ぶ雀》はルネサンスの有名画家ラファエロの工房で働く最も優れた協力者と言われたジョヴァンニ・ダ・ウーディネの素描です。
赤チョークであたりを付けて水彩画で仕上げられたもので、関係性は不明ですが、ジョヴァンニが手がけたヴァチカンのロッジアの装飾やヴィラ・ファルネジーナの壁画にも同じような空飛ぶ鳥が描かれているのだそうです。
この雀ちゃんが本当に可愛くて。
本展会場の壁にも登場して、私たちを出口まで導いてくれるので注目です。
ジョヴァンニ・ダ・ウーディネ《空飛ぶ雀》 ペスウェーデン国立美術館
16世紀のマニエリスム期(後期ルネサンス)に入ると、盛期ルネッサンスで巨匠たちが完成させた絵画を理想としながらも、より独自の表現を模索していくようになりました。
この《老人とその他の顔の習作》はそんなマニエリスム期の画家の素描です。
様々な人物の頭部が並んでいて、髪の毛のうねりなど細かなところまで滑らかなタッチで描かれています。
陰影の網掛けなど、漫画表現に類似したような描き方だったのですごく気になりました。
ドメニコ・ベッカフーミ《老人とその他の顔の習作》ペスウェーデン国立美術館
16世紀末ごろ、イタリア美術は改革期を迎えます。
これまで関心が低迷していた自然観察が再び重視されるようになったのですが、この改革に一躍を担ったのが ボローニャ出身の画家一族・カラッチ一族でした。
彼らはボローニャに画家のための学校を設立。
自然観察を重視してマニエリスムの人工的な様式の刷新を図りました。
《画家ルドヴィーコ・カルディ、通称チゴリの肖像》はそんなカラッチ一族の一人 アンニーバレ・カラッチが残した肖像素描で、まさに素描を制作中の画家仲間を描きとめた作品です。
アンニーバレ・カラッチ《画家ルドヴィーコ・カルディ、通称チゴリの肖像》1604-09頃 スウェーデン国立美術館
描くひとは描かれるひとでもあるんですね。
画家仲間がペンを走らせている姿を横から眺めていたのでしょうか、友人同士のゆったりとした雰囲気まで伝わってくる暖かな素描に思えてとても好きでした。
フランスの素描・3選
第2章はフランス。
イメージどおり華やかでデザイン性のある素描が多かったように思います。
16世紀初頭のフランスでは、国王フランソワ1世が着手したフォンテーヌブロー宮殿の再建と増築に各国から芸術家たちが集められ、芸術活動を活気づけました。
これに関わった画家や建築家たちはフォンテーヌブロー派とも呼ばれています。
《白鳥の騎士》は宮殿で開催されるベージェント(仮想行列やショー)の衣装デザインです。
フランチェスコ・プリマティッチョやニコロ・デッラバーテらイタリアの画家たちが手掛けたもので、このほかにも《蛙男》という鱗で覆われた衣装もあり、とてもおもしろいデザインばかりでした。
フランチェスコ・プリマティッチョ周辺《白鳥の騎士》スウェーデン国立美術館
その後、16世紀末から17世紀初頭にかけてフランスで頭角を現した画家に、ジャック・ベランジュやジャック・カロがいます。
彼らはマニエリスム様式を含む美術の流行をと入りれながらも個性豊かな作風に発展させました。
この《聖アントニウスの誘惑》はジャック・カロの版画作品の下絵です。
キリスト教の聖人アントニウスの伝説を描いたもので、修行中に悪魔が現れて攻撃してくる場面が躍動感をもって描かれていました。
ジャック・カロ《聖アントニウスの誘惑》スウェーデン国立美術館
そして17世紀、フランス美術もまた転機を迎えます。
国王ルイ13世の宰相リシュリューが芸術振興策を講じるとともに、イタリアから帰省したシモン・ヴーエによってイタリアのバロック様式が広まったのです。
また当時、キリスト教会と並んで芸術家の重要な保護者だったのがヨーロッパの王侯貴族たちでした。
スウェーデン国立美術館の素描コレクションの基礎を築いたニコデムス・テッシンが自邸の天井装飾のデザインとして制作を依頼した《テッシン邸大広間の天井のためのデザイン》は、本展の目玉作品のひとつでもあります。
ルネ・ショヴォー《テッシン邸大広間の天井のためのデザイン》1690年代 スウェーデン国立美術館
水彩が使われていて、抜けるような青が非常に美しい作品です。
手がけたのはルネ・ショヴォーという画家で、カール12世の首席芸術家になるなど国際的に活躍しました。
華やかで複雑で繊細なデザインであり、それぞれのモチーフの配置にもこだわりを感じます。
これは絶対に近くで見るべき!
細かなところまで抜け目なく描かれています。
ドイツの素描・2選
第3章はドイツです。
16世紀のスイス、オーストリア等を含むドイツ語圏地域をまとめたセクションで、全体的に渋めで素朴な印象を受けました。
15世紀半ばまでのドイツ語圏地域は後期ゴシック様式の影響下にありましたが、1450年頃からルネサンスの影響を受けます。
ルネサンス期の素描には美術作品や工芸品の下絵として描かれたものほか、素描自体が独立した作品となっている作品もありました。
それがこの アルブレヒト・デューラーの《三編みの若い女性の肖像》です。
アルブレヒト・デューラー《三編みの若い女性の肖像》1515年 スウェーデン国立美術館
「彼が単色で、すなわち黒線を使って表現していないものがあるだろうか」 とも言わしめたデューラーの黒線作品。
本作も黒チョークと木炭と「黒線」のみで描かれたもので、肌の凹凸の表現が特徴的です。
若い女性とは?(若くは見えない…)、というツッコミも含めて印象に残りました。
ドイツでは男女のカップルや農民、兵士など世俗的な主題がいち早く受け入れられていたそうです。
16世紀前半にはドナウ河周辺で活躍した画家たちによって風景が盛んに描かれるようにもなりました。
ルートヴィヒ・レフィンガー《ヘレネを伴い遁走するパリス》スウェーデン国立美術館
《ヘレネを伴い遁走するパリス》ではそんなドイツの主題がよく表れている作品だと思います。
軽いタッチでさらさらと描かれている感じが格好良くて気に入りました。
ネーデルラントの素描・2選
最終章はネーデルラント。
現在のオランダやベルギーにあたる地域です。
この地域では宗教的な作品から、風景画、風俗画、動物を描いたものなどほかの地域と比べて多岐にわたる素描が観られました。
というのも、16世紀末に政治・宗教的な動乱に見舞われて南北に分裂したネーデルラントでは、好まれる主題が南北で異なっていたためです。
スペイン・ハプスブルク家領フランドルでは、ヤン・ブリューゲル(父)らを中心に芸術が再興しました。
一方、市民を中心としたオランダでは、偶像崇拝を禁じるプロテスタント国家であったことや、絵の購入者が市民たちだったこともあり身近な主題が好まれましたそうです。
アントニー・ワーテルロー《1本の木のある風景》スウェーデン国立美術館
この《1本の木のある風景》を描いたアントニー・ワーテルローはオランダ黄金時代の風景画家です。
ワーテルローはフランドルの織物職人の息子で、宗教的迫害を避けて家族とともにアムステルダムに移りました。
彼の作品は主に素描とエッチングで、油彩画で知られているのはわずかだそうです。
ねじ曲がった木の描写がまるで絵本に出てくるようで気に入りました。
森をさ迷っていたら突然動きだして、旅人を驚かせてきそうな気がします。
アドリアーン・ファン・オスターデ《宿屋の内部 》1640年代 スウェーデン国立美術館
アドリアーン・ファン・オスターデの《宿屋の内部》も良かったです。
オスターデは17世紀オランダで活動した画家で、農民の風俗を主題に多くの油彩画を残しました。
本作も農民の日常の風景なのでしょうか、会話が聞こえてきそうなリアルで素朴な描写が気に入りました。
同じくオランダ出身の画家、ゴッホの《ジャガイモを食べる人々》にも通じるものがある気がします。
特にお気に入りの2枚
1つ目はフランスの素描から。
ジャック・ベランジュの《女庭師》です。
ジャック・ベランジュはフランスで16世紀末から17世紀初頭に頭角を現した画家の一人で、フォンテーヌブロー派の画家でもあります。
北方ヨーロッパやドイツのデューラーなど多方面から表現方法を吸収したそうですが、油彩画はほとんど残っていないのだとか。
彼が描いた本作は、庭師の素朴な服装なのにファッショナブルな一枚となっていて非常に好きでした。
ジャック・ベランジュ《女庭師》スウェーデン国立美術館
もう一つはネーデルラントの素描から。
レンブラント・ファン・レインの《ティティア・ファン・アイレンブルフの肖像》です。
レンブラントは17世紀オランダのバロック画家で、光と影の魔術師と称され、《夜警》などの作品が有名ですよね。
レンブラントのびっしりい絵具で塗られた油彩画が思い浮かぶだけに、この素朴でラフな素描に何故だか惹かれるものがありました。
女性の日常を切り取ったようなシーンが愛おしくなります。
レンブラント・ファン・レイン《ティティア・ファン・アイレンブルフの肖像》1639年 スウェーデン国立美術館
素描コレクション展、想像よりもずっと楽しかったです。
素描だけを集めたモノクロの多い絵画展というのは新鮮でした。
シンプルで情報量が少ないからか、色がたくさん使われた綺麗な油彩画に癒されるのとはまた違った、心がフラットになれる効果がある気がします。
鑑賞後の気分はとても晴れやかでした。
夏休み中に行きましたが、混雑もなく広ーい空間でゆったり優雅に鑑賞できたので、心が疲れていたら行ってみるのも良いかもしれいません。
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「素描コレクション展」情報
グッズ
「素描コレクション展」のグッズは種類がたくさんありました。
定番のポストカードやクリアファイル、ブックマーカーはもちろん揃っています。
会場の外の特設ショップで販売しており、お財布を持たずに鑑賞しても大丈夫です。
✦ 受注生産品あり ネリス・フィッセル《眠る犬》がモチーフのぬいぐるみキーホルダー「眠る犬すやすやマスコットBC」は、特設ショップでは売り切れとなり受注生産になっています。 2025年8月現在、どちらも 美術展ナビオンラインストアにて9月28日まで申し込み受付中。 |
ポストカード
ポストカードは6枚買ってきました。
本展で写真が撮り放題だったので、今回はポストカードは買わなくてもいいような気がしたけど、せっかくだからと厳選して選んできました。
ポストカードは1枚 198円(税込)。
美術館のポストカードはだいたい168円なことが多いのですが、それよりちょっとお高めですね。
メタルブックマーカー
毎回グッズにあれば買うことにしているメタルブックマーカー。
《テッサン邸大広間の天井のためのデザイン》がトリミングされています。
とても綺麗です。
メタルブックマーカーは 1,100円(税込)でした。
ボールペン
迷った末にボールペンも買いました。
種類は2種類あり、私はジョヴァンニ・ダ・ウーディネの《空飛ぶ雀》のモチーフを選びました。
書きやすさは可もなく不可もなくという具合でしたが、可愛いから問題なしです。
ボールペンは1つ 660円(税込)でした。
すねこ アクリルキーホルダー
素描コレクション展の公式キャラクター「すねこ」がとても可愛かったのでグッズをいくつか買ってきました。
アクリルキーホルダーは全6種類のランダムです。
私は文字が入っていない「すねこ」単独デザインを狙っていたのですが、当たりませんでした。
この子に縁があったようです。
それにしても、公式キャラクターが猫なのは意外です。
注目作品のひとつは《眠る犬》と犬ですし、展示されている素描のなかに猫が描かれている作品はなかったはずなんですよね。
どうやら、素描の「描」と「猫」を間違えて「素猫(すねこ)」と読んじゃった!
っていうところからきているらしいです。
かわいっ!
すねこ アクリルキーホルダーは1枚 550円(税込)でした。
すねこ ステッカー
ステッカーのデザインは自分で選べたので、好きなものを買ってきました。
このステッカーの名前は「素猫の素描」だそうです(好き)。
すねこ ステッカーは1枚 550円(税込)でした。
すねこ ステッカー(先着5,000名配布)
会計のときにステッカーをいただきました。
特設ショップで総額税込4,000円以上買うと貰えるらしいです。
先着5,000名とのこと。
知らなかったから嬉しい驚きでした。
音声ガイド
音声ガイドは会場レンタル版とアプリ配信版の2種類があり、私は会場レンタル版を選びました。
宝塚ファンの方でしょうか、ガイド機を借りる所でパネルの写真を撮っている方もいらっしゃいました。
- ナビゲーター
月城かなとさん(元宝塚歌劇団月組トップスター) - ナレーター
目黒光佑さん(声優・ナレーター)
会場レンタル版は 650円(税込/現金のみ)。
アプリ配信版は 800円(税込)です。
混雑状況
夏休み期間中である8月の平日昼に行ったのですが、ゆったり鑑賞できました。
所要時間
所要時間は1時間~1時間半程度です。
私は解説をすべて読み、時々写真を撮ったりしておおよそ1時間半かかりました。
チケット
チケットは 一般 2,000円(税込) で、オンラインでも窓口でも同じ値段です。
私は久しぶりに窓口で当日券を買いましたが、ほとんど並ばずにすみました。
とはいえ、窓口で買っても絵柄チケットは貰えないので、オンラインチケットを事前に買った方がスムーズに入場できていいと思います。
ロッカー
国立西洋美術館ではロッカーを利用できます。
ロッカーは無料ですが100円玉は必要です。
撮影スポット
国立西洋美術館ではいつも会場入り口の広間が撮影スポットです。
また今回の「素描コレクション展」では展示されている全作品が撮影可能でした。
巡回
「素描コレクション展」に巡回はありません。
展覧会情報まとめ
お出かけ前に美術館公式サイトをご確認ください。
以下はすべて東京展の情報です。
展覧会名 |
スウェーデン国立美術館 |
東京会場 |
2025年7月1日[火]-9月28日[日]
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開室時間 |
9:30 〜 17:30(金・土曜日は20:00まで)
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休館日 |
月曜日、9月16日[火] |
混雑状況 | 夏休み中である8月の平日昼でも混雑なしだった |
所要時間 | 1時間~1時間半 |
チケット | 一般当日 2,000円 オンラインも窓口も変わらないのでオンライン推奨 |
ロッカー | 無料/100円玉必要 |
音声ガイド | あり |
撮影スポット | あり+ 全作品が撮影可 |
グッズ | 展示会場「外」に特設ショップあり |
巡回 |
なし |
番外編:「ピカソの人物画」
素描コレクション展のチケットで国立西洋美術館の常設展も鑑賞できます。
2025年10月5日(日)まで、常設展示内で小企画展「ピカソの人物画」が開催中です。
ただでさえアバンギャルドなピカソ作品なのに、素描コレクション展のあとに観たからギャップがすごかったです。
素描コレクション展ではルネサンスやバロックなど16~17世紀の素描が中心でしたが、ピカソはその2~300年後の画家。
長い歴史を経てこの表現にたどり着いていると思うと絵画の世界ってやっぱり興味深いなと思います。
パブロ・ピカソ《女性の肖像(クラーナハ(子)に基づく》1958年 国立西洋美術館井内コレクションより寄託
この《女性の肖像(クラーナハ(子)に基づく》は、ドイツ・ルネサンスの画家ルカス・クラーナハ(子)の《女性の肖像》(1564年)がもとになっています。
構図や女性の衣装などは原図にほぼ忠実に描かれていますが、顔部分の正面と横向きを組み合わせた表現にピカソの特徴が表れています。
番外編:常設展をサクッと散策
常設展は何度も行っていますが、たびたび展示替えされているので、新しく気になる作品を探しながら軽く周ってきました。
やっぱり私はナビ派画家のあったかい日常の絵が大好きです。
エドゥアール・ヴァイヤール《縫物をするヴァイヤール夫人》のやわらかな空気感、パステルの優しい色遣い。
とても可愛らしいです。
エドゥアール・ヴァイヤール《縫物をするヴァイヤール夫人》1920年 国立西洋美術館フジカワ画廊より寄贈
また、最近別の展覧会「ルノワール×セザンヌ展」でバラの静物画をたくさん観たからか、ゴッホの《ばら》の絵も目に入りました。
ゴッホが晩年に入院したサン=レミの精神療養院に咲くバラを描いたもので、絵の具の厚みとうねるようなタッチがゴッホらしいですね。
額縁は新調される予定だそうです。
どうやら以前までの額縁(金色の装飾的なデザイン)では簡素な額縁を好んだゴッホの嗜好と合わないこと、また鑑賞時に絵画に影が入ってしまうなどが理由だそうで、額縁ひとつにとっても様々なことを鑑みて選ばれるのだなと思いました。
フィンセント・ファン・ゴッホ《ばら》1889年 松方コレクション
今回の常設展でのいちばんのお気に入りはアクセリ・ガッレン=カッレラの《ケイテレ湖》です。
作者はフィンランドを代表する国民的画家で、描かれているのはフィンランド中部にあるケイテレ湖畔の風景。
制作当時、対ロシアの独立運動中で熱烈な愛国感情の高まりにあったフィンランドにとって、このように自国の自然を描くというのは国家の自立性を体現するものとみなされたそうです。
光を受けて輝く清閑な水面が美しければ美しいだけ、国の行く末を憂う人々の思いが深まっていったのかもしれません。
アクセリ・ガッレン=カッレラ《ケイテレ湖》1906年 国立西洋美術館
この絵が描かれてから100年以上のときを経てもなお戦争で陣地争いをやっているような現代を思うと、やるせない想いにもなってきます。
それでもこの絵はとても美しかったです。
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関連情報
● 「藤田嗣治 絵画と写真」
2025年8月31日(日) まで東京ステーションギャラリーで開催中。
藤田嗣治の多くの写真作品と、写真をもとに描かれた絵画を見比べられる珍しい展覧会です。
絵画よりも写真が多めで、藤田が生きた当時の光景がありありと蘇ります。

●「ルノワール×セザンヌ ― モダンを拓いた2人の巨匠」
2025年9月7日(日)まで三菱東京一号館美術館で開催中。
印象派、ポスト印象派の巨匠2人の絵画を見比べながら楽しめました。
可愛いらしい静物画がたくさんあって癒されました。

●「モネ 睡蓮のとき」
2025年9月15日まで「東京 → 京都 → 愛知」と全国を巡回中。
モネの睡蓮ばかりを集めた、睡蓮づくしの展覧会です。
また、晩年のジヴェルニーの自宅で描いたバラの庭の作品も素晴らしかったです。

●「異端の奇才 ビアズリー展」
2026年1月18日まで「東京 → 福岡 → 高知」と全国を巡回中。
25年の生涯を駆け抜けた新進気鋭の画家 ビアズリーの作品がたくさん集められています。
あの独特な毒のある絵柄がたまりません。

●「ピカソとその時代」展(2022/終了)
常設展内でやっていたピカソ展。
私がピカソの作品をがっつり見たのはこの時が初めてでした。

▼ 2020年から現在まで、観に行った美術展の感想はこちらにまとめています

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最後まで読んでいただきありがとうございました。
美術展や読書記録の X もやっているので、よければ遊びに来ていただけると嬉しいです。
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