東京ステーションギャラリーの
「藤田嗣治 絵画と写真」展に行ってきました。
藤田嗣治 単独の展覧会に行ったのは初めてでした。
同じ日に三菱一号館美術館でやっている「ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠」を観に行っていて、

同じ東京駅で開催されているならこちらも覗いてみようかな、という軽いノリで参戦しました。
藤田嗣治の「絵画」作品は、これまで展覧会で何点か観たことはありました。
しかし、彼の「写真」となると、もしかしたら一度も観たことがなかったかもしれません。
生涯にわたって数千枚にもおよぶ写真を撮っていた画家だと知って非常に驚きました。
この記事では美術展の備忘録として作品写真と共に展覧会の内容と感想を書いています。 ネタバレを避けてグッズなどの展覧会情報だけを知りたい方は「藤田嗣治 絵画と写真 情報」までジャンプしてください。 |
「藤田嗣治 絵画と写真」 感想
展示構成(絵画と写真の割合)
"絵画と写真"というタイトルになっていますが、私の体感だと「絵画<<<<写真」と、圧倒的に写真の展示が多く感じました。
私自身が写真より絵画のほうが好きなので、そう思えてしまっただけかもしれません。
しかし、展示方法としては「写真」と「写真を参考に描かれた絵画」とが並んでいて、写真と絵画とを見比べられる構成になっていたので、大変わかりやすく鑑賞できました。
とはいえ、これまで藤田嗣治に関わらず絵画の展覧会はたくさん観てきましたが、写真の展覧会となるとほとんど行ったことがなくて。
カメラの知識も全然ありませんので、本展の感想は短めになっています。
藤田嗣治、ざっくり年表
ボリス・リプニツキ《藤田嗣治》1925年頃 シャーマン・コレクション(河村泳静氏所蔵/伊達市教育委員会寄託)
藤田嗣治 / レオナール・フジタ
1886~1968年(没年81歳)
- 東京府牛込区(現・新宿区)で生まれる
- 東京美術学校(現・東京藝術大学)を卒業し、26歳で画家になる志を抱いて単身フランスへ
- 試行錯誤の末に独自の画風を確立
- 特徴的な「乳白色の下地」の裸婦作品で1920年代のヨーロッパ画壇を席巻
エコール・ド・パリ★の寵児となる - 第二次世界大戦中に日本で作戦記録画を制作
戦争責任を問われて挫折を味わう - 再びフランスに戻る
晩年はフランス人 レオナール・フジタとして穏やかな生活を営みながら、精力的に制作を続ける
★エコール・ド・パリとは?
20世紀初頭にパリに集まった世界各国の画家や彫刻家、画商、評論家などを指す総称。
特定の芸術運動や理論に縛られず、それぞれの個性を発揮した自由な表現を追求したことが特徴。
藤田嗣治、絵と写真の相互作用
《猫を抱く少女》は藤田嗣治絵画の特徴である「乳白色・女性・猫」の三拍子がそろった油彩の作品です。
一目見れば、藤田嗣治だとわかるこの個性的な表現を見出すには、あの時代に単身フランスに渡り、日本人でありながらヨーロッパを拠点にアーティストとして活動していこうというバイタリティが必要不可欠だったのかもしれません。
「おかっぱ頭・丸メガネ・ちょび髭」とキャラクター性あふれる外見もまた、自己プロデュース力の賜物です。
ピカソなどの前衛芸術家たちと同時代に異国の地で活躍できていたのだから、ものすごいことです。
藤田嗣治《猫を抱く少女》 1949年 油彩、カンヴァス 個人蔵(名古屋市美術館寄託)
藤田嗣治は最終的にはフランス国籍を取得し、ヨーロッパでその生涯を終えました。
この《市街 バスの前の人々》の写真は、藤田が69歳、ちょうど藤田嗣治からフランス人「レオナール・フジタ」となった年の写真です。
藤田嗣治《市街 バスの前の人々》1955年8月16日 東京藝術大学
フジタは生涯にわたって数千点におよぶ写真を残したそうです。
世界中を旅していたフジタは、自身の拠点であるパリ、情熱の国ラテンアメリカ、活気あふれる中国・北京、そして生まれ育った日本。
国境を越えて様々な光景を写真に焼き付けました。
《室内の壁、チェスト、オブジェなど》は、フジタが72歳、ベルギー王立アカデミーの会員となった頃の写真です。
藤田嗣治《室内の壁、チェスト、オブジェなど》1958年7月5日 東京藝術大学
フジタは「絵画の素材」として写真を活用していました。
本展では、写真と、その写真を参考にして(または全く同じ構図で)描かれた油彩画とを見比べられるようになっています。
また、フジタ自身が撮った写真ではなく、他者がフジタを撮った写真も多数観ることができます。
例えばこの油彩画《マドンナ》では、フジタがモデルを前に作品制作に取り組んでいる様子が写真に収められていました。
藤田嗣治《マドンナ》 1963年 油彩、カンヴァス ランス美術館
本展で観られる油彩画の中で私が一番惹かれたのは、《フルール河岸(ノートル=ダム)》です。
参考にしたであろう写真と隣同士に展示されています。
フジタ作品はゴシック小説の挿絵にもなりそうなホラーが似合う雰囲気があって、ヨーロッパ風景との相性が抜群ですよね。
藤田嗣治《フルール河岸(ノートル=ダム)》 1963年 油彩、カンヴァス ランス美術館
油彩画なのに、作品を間近で観察しても絵の具に厚みが全く感じられずに戸惑いました。
水彩画と言われても不思議に思わないかもしれません。
同じ日にルノワールとセザンヌの厚塗りの油彩画を観ていたのもあって、ギャップが大きかったです。
お気に入りの1枚
藤田嗣治《路を歩く赤いコートの少女》撮影年不明 東京藝術大学
本展ではやっぱり写真作品の中からお気に入りを決めたいなと思いまして。
《路を歩く赤いコートの少女》を選びました。
単純に可愛らしい写真なのはもちろん。
女の子が近くにいる構図は、撮影者である藤田の存在がより濃く感じられる気がします。
撮影時にどんな声をかけたのかなとか、藤田の風変わりな見た目に女の子が興味を持ったのかな、とかいろいろな想像が思い浮かびました。
画面下が黒いのはわざとなのか、それとも現像時の技術的なものなのかも気になりました。
「藤田嗣治 絵画と写真」展 ―
まず、藤田嗣治ファンの方、写真好きの方には迷わずおすすめです。
ファンというほどではなくただ絵画が好きな私には、絵画が少なかったぶん少々物足りなく思える部分もありましたが、初めて藤田嗣治 単独の展示を観られたし、経験として、行って良かったなと思います。
「藤田嗣治 絵画と写真」情報
グッズ
「藤田嗣治 絵画と写真」展のグッズは小規模に展開されています。
定番のもの(文具とかマスキングテープとか)はそろっていました。
ショップは展示会場の中にありますので、お財布を持って鑑賞してください。
ポストカード
私はポストカードだけ買ってきました。
手に持っているのは《占いの老女》という作品で、後期展示のみのため前期に観に行った私は実物を観れていません。
ただすごく気に入ってしまったので一緒に買ってきました。
ポストカードは1枚 165円(税込)でした。
音声ガイド
「藤田嗣治 絵画と写真」展には音声ガイドはありません。
混雑状況
平日の15時くらいに行ったのですが、そこまで混雑していませんでした。
所要時間
所要時間は1時間~1時間半程度です。
私の場合は、解説をすべて読み、写真に比べて絵画のほうをじっくり鑑賞しておおよそ1時間ちょっとでした。
※本展では絵画より写真の展示が多いです
チケット
チケットは 一般 1,500円(税込) です。
オンラインチケットと窓口どちらも同じ値段なので、事前にオンラインチケットを買っておく方がスムーズに入場できます。
オンラインチケットでも、入場時に絵柄のカードが貰えます。
ロッカー
東京ステーションギャラリーでは無料のロッカーを利用できます。
ロッカーは鍵式で100円玉不要です。
撮影スポット
「藤田嗣治 絵画と写真」展では展示作品の撮影は不可です。
展示会場からショップに移動する際に通る回廊に「撮影スポットあり」と書かれていたのですが、どこを指しているのかよくわからず、、、
3連ポスターがあったのでとりあえず撮ってみました。
それから撮影スポットではありませんが、東京ステーションギャラリーの展示会場を移動する際に通るレンガ壁の階段。
ギャラリーの建物自体が重要文化財になっていて、このレンガ壁は創業当時のレンガを残しているスポットなのだそうです(レンガに触るのNGです)。
とっても雰囲気がありますので移動中も注目です。
巡回
「藤田嗣治 絵画と写真」展は巡回展です。
東京をスタートし、名古屋、茨城、北海道に巡回します。
- 東京ステーションギャラリー
会期:2025年7月5日(土) ~ 8月31日(日) - 名古屋市美術館
会期:2025年9月27日(土) ~ 12月7日(日) - 茨城県近代美術館
会期:2026年2月10日(火) ~4月12日(日) - 札幌芸術の森美術館
会期:2026年4月29日(水・祝) ~6月28日(日)
展示替え
「藤田嗣治 絵画と写真」展は、会期中、展示替えがあります。
また、全国巡回展のため、作品リストに載っていても東京展では展示されない作品もあります。
- 前期:7/5~8/3
- 後期:8/5~8/31
展覧会情報まとめ
お出掛け前に美術館公式サイトをご確認ください。
以下はすべて東京展の情報です。
展覧会名 |
藤田嗣治 絵画と写真 |
東京会場 |
2025年7月5日(土)~8月31日(日)
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開室時間 |
10:00 – 18:00
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休館日 |
月曜日
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混雑状況 | 平日15時頃・混雑していない |
所要時間 | 1時間~1時間半 |
チケット | 一般当日 1,500円 窓口もWebも変わらないのでWeb事前購入推奨 |
ロッカー | 無料/100円玉不要 |
音声ガイド | あり |
撮影 | なし |
グッズ | 展示会場「内」にて小規模 |
巡回 |
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番外編:
生誕140周年で開催される4つの展覧会
藤田嗣治 生誕140周年記念ということで、2025~2026年にかけて全国で藤田嗣治関連の展覧会が4つ開催されます。
- ランス美術館コレクション
藤田嗣治からレオナール・フジタへ(軽井沢) - 藤田嗣治×国吉康雄
二人のパラレル・キャリア―百年目の再会(兵庫) - 藤田嗣治 7つの情熱(全国巡回)
- 藤田嗣治 絵画と写真(全国巡回)
今回観に行った3番の「藤田嗣治 絵画と写真」展は写真がメインでした。
絵画好きの私はおそらく4番の「藤田嗣治 7つの情熱」展のほうが楽しめたのかもなと思いました。
各展覧会について詳しくは特設サイトをご覧ください。

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関連情報
●「ルノワール×セザンヌ ― モダンを拓いた2人の巨匠」
2025年9月7日(日)まで三菱東京一号館美術館で開催中。
印象派、ポスト印象派の巨匠2人の絵画を見比べながら楽しめました。
可愛いらしい静物画がたくさんあって癒されました。

●「モネ 睡蓮のとき」
2025年9月15日まで「東京 → 京都 → 愛知」と全国を巡回中。
モネの睡蓮ばかりを集めた、睡蓮づくしの展覧会です。
また、晩年のジヴェルニーの自宅で描いたバラの庭の作品も素晴らしかったです。

●「異端の奇才 ビアズリー展」
2026年1月18日まで「東京 → 福岡 → 高知」と全国を巡回中。
25年の生涯を駆け抜けた新進気鋭の画家 ビアズリーの作品がたくさん集められています。
あの独特な毒のある絵柄がたまりません。

●「オディロン・ルドン ― 光の夢、影の輝き」(終了)
ルドンの「黒」から「色彩」への画風の変容を一望できます。
ルドン流進化論といわれる石版画集『起源』が9点揃って展示されますし、油彩やパステルの作品の美しさをあふれんばかりに味わえます。
今のところ2025年に観に行った展覧会のなかでもNO.1に大満足の展覧会でした!
最推し画家の展覧会なので当たり前ではあるんですけどね!

▼ 2020年から現在まで、観に行った美術展の感想はこちらにまとめています

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最後まで読んでいただきありがとうございました。
美術展や読書記録の X もやっているので、よければ遊びに来ていただけると嬉しいです。
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