森アーツセンターギャラリーの
「特別展アリス ― へんてこりん、へんてこりんな世界 ―」に行ってきました。
原作であるルイス・キャロルの小説から、
映画、ディスビーアニメ、舞台衣装やファッションに至るまで、『不思議の国のアリス』にまつわる約300点の作品が集められた展覧会です。
あのアリスの不思議で奇想天外な世界観がそのまま会場に再現されています。
来場した方たちの写真を見て、わたしも行ってみたくなったので参戦してきました。
「特別展アリス」 感想・楽しかったところ
全体の感想 -アリスの誕生から現在までの活躍を広く知れる
「特別展アリス」は、ルイス・キャロル原作の誕生秘話から始まり、映画、舞台、ファッション、街中に登場するアリスと、『不思議の国のアリス』の様々な活躍を一望できる展覧会 になっています。
森アーツセンターギャラリーでは、たびたび、一つの作品を取り上げた「〇〇展」が開催されていますよね。
どれもが"原作"に関する展示のボリュームが多いイメージでしたが、今回の「特別展アリス」では、すこし違うように思います。
特別展アリス 展示風景:ディズニー映画『ふしぎの国のアリス』セル画
原作ももちろん取り上げられるのですが、全体としてはアリスの誕生から現代までを広く浅めに知ることができる、という印象です。
原作であるルイス・キャロルの小説については最初のセクションだけなので、原作重視の方からしたらすこし物足りなさはあるかもしれません。
特別展アリス 展示風景:町のあらゆる場所にアリスが
一方で、家族や友達と鑑賞したり、デートで来るにはピッタリだなと思いました。
美術館のような おしゃべりできない厳かな雰囲気は一切ないですし、会場はプロジェクションマッピングが使用されていて、アトラクションのような楽しい空間になっています。
アリスに詳しくなくても気軽に観に行けるラフさが、大人から小さなお子様まで楽しめる展覧会ではないかなと思いました。
「ドジソン」と「ルイス・キャロル」と「アリス」
チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンは、『不思議の国のアリス』の原作者 ルイス・キャロルの本名です。
アリスの物語は、
数学者であったドジソンが、知人のヘンリー・リドゥルの娘たちに贈った即興の物語からはじまりました。
特別展アリス 展示風景:『不思議の国のアリス』の初版、他
リドゥル家の3姉妹のうち 次女の名前が「アリス」。
「ルイス・キャロル」のペンネームは、本名"チャールズ・ラトウィッジ"をラテン語に変換して、再び英語名に直して並び替えたものなのだそうです。
特別展アリス 展示風景:ドジソンが撮った写真
いかにも数学者らしいペンネ―ムの付け方からして、あのへんてこりんなアリスの物語がすべて計算された"変さ"なのかと思うととても皮肉っぽくておもしろいです。
ドジソンは子どもたちに喜ばれるような物語を作るだけでなく、当時発明されたばかりの写真を楽しむ一面もあったようで、数学者であり創作者でもあったひとなのだなと感じました。
《ドードーの複合骨格》デレク・フランプトン(剝製師) 1998年再構築 オックスフォード大学自然史博物館蔵,他
アリスの物語に出てくる「ドードー鳥」は今では絶滅してしまった鳥ですが、ドジソンが生きていた時代(1832~1898年)にはまだ実在していました。
このように、ドジソンと同時代にあった動物、生活用品、そして絵画の展示もあったのが、個人的にいちばんうれしかったです。
(左)アーサー・ヒューズ《白い雌鹿》1870年 グワッシュ
(中)ジョージ・フレデリック・ワッツ《オフィーリアを演じるエレン・テリー》1880~1900年(複製)版画、紙
(右)ジュリア・マーガレット・キャメロン《アルフレッド・テニスン》1865年8月 ガラス湿板写真のネガ原版から現像した鶏卵紙
いずれもヴィクトリア・アンド・アルバート博物館蔵
『不思議の国のアリス』が生まれた時代の空気をすこしでも感じることができたので、味わい深く充実していました。
ジョン・テニエルの挿絵
特別展アリス 展示風景:会場の装飾を撮ったもの
『不思議な国のアリス』のジョン・テニエルの挿絵は本当に有名ですよね。
黒の線の細かなタッチで、ちょっぴりリアルで不気味にも見える絵柄が、アリスの世界観にぴったり。
物語のキャラクターをより印象的に映し出しています。
会場では、ジョン・テニエルの原画だけでなく、テニエルが影響を受けたであろう画家の作品も並べて展示されていました。
ジョン・エヴァレット・ミレイ《二度目の説教》1864年 水彩 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館蔵、他
特に、ジョン・エヴァレット・ミレイの《二度目の説教》の赤い服の女の子が好きです。
ふっくらとしたほっぺたに、スカートとタイツの雰囲気がアリスにぴったりの可愛さでした。
ほかにも『鏡の国のアリス』にでてくる ハンプティ・ダンプティの挿絵などなど。
《わしと握手することもできるぞ(ハンプティ・ダンプティ)》の校正刷り『鏡の国のアリス』より ジョン・テニエル(画)・ダルジール兄弟(彫版) 1871年(複製) インク、紙 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館蔵、他
ハンプティ・ダンプティは、名前だけ知っています。
『鏡の国のアリス』は小学生の時に読もうとして挫折したっきりになっているので、大人になったいま、あらためて読んでみたいなと思っています。
特別展アリス 展示風景:「アリスの誕生」セクション
ここまで感想を書いてきました ルイス・キャロルとジョン・テニエル関連の展示は、「アリスの誕生」というセクションで一緒に展示されています。
特別展アリスのなかで、個人的には一番好きなセクションでした。
サルバドール・ダリのアリス
サルバドール・ダリ《狂ったお茶会》1969年『不思議の国のアリス』表紙 ヘリオグラビア印刷(註釈付き) ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館蔵
『不思議の国のアリス』のテーマは、様々なアーティストによって表現されています。
今回の「特別展 アリス」でもたくさんの作品を観ることができるのですが、なかでもサルバドール・ダリのアリスが印象的でした。
ダリといえばのゆがんだ時計も健在です。
ダリ自体がどこかアリスに通じるへんてこさ、異様さのある作風なので、アリスの世界観にマッチしています。
現代アーティストだと、クリスチャーナ・S・ウィリアムズさんのアリス作品もすっごく良かったです。
クリスチャーナ・S・ウィリアムズ《黄金の午後・うさぎ穴落下・涙が池・イモムシの忠告・ブタと胡椒・クィーンのクローケー場》2020年(複製)インク、紙
クリスチャーナ・S・ウィリアムズさんはアイスランドのイラストレーターで、伝統的なヴィクトリア調の版画とデジタルコラージュの技術を複合させた作品になっているのだそうです。
展示の最後の最後に観られるのですが、特別展アリスの締めくくりにふさわしい美しい作品でした。
バレエ『不思議の国のアリス』
特別展アリス 展示風景:バレエ『不思議の国のアリス』
『不思議な国のアリス』はバレエにもなっていました。
ボブ・クロウリーさんデザインのハートの女王の衣装のインパクトは強烈です。
写真ではわかりにくいですが、かなりの大きさがあります。
これが舞台に出てきたら目立つし忘れられないでしょう。
それにしてもこの衣装、どうやって着るんでしょうね…。
不思議の国の展示会場
特別展アリス 展示風景
展示会場全体がアリスの世界に入ったようで、子どもから大人まで楽しめる仕様になっています。
遊園地のアトラクションに入ったようなワクワク感で鑑賞できるので、家族で来ても、お友達や恋人と来ても終始飽きずに過ごせると思いました。
Alice Curiouser and Curiouser, May 2021, Victoria and Albert Museum Installation Image,Tea Party created by Victoria and Albert Museum, Alan Farlie, Tom Piper, Luke Halls Studio©Victoria and Albert Museum, London
いちばん見たかった「狂ったお茶会」のインスタレーションも観ることができました。
こちらは色が移り変わるので、ぜひほかの色も観てほしいです。
まとめ
『不思議な国のアリス』に登場するあらゆるものは、どれもへんてこで、ちょっと恐いけど可愛くもあり憎めない、何とも言えない魅力がありますね。
ひらひらのお洋服にカチューシャやタイツを履いたアリス。
時計をもって急く兎とおかしなチェシャ猫。
いかれ帽子屋と三月兎のお茶会。
虫や花がしゃべったり、トランプたちとハートの女王。
モチーフにしたくなっちゃうものばかり。
これだけ長い間 活躍し続ける作品は他にないかもしれません。
とても楽しかったです。
「特別展 アリス」 情報
グッズ
さすが「特別展 アリス」。
グッズもかなり充実しており、私も少し買ってきました。
グッズ売り場では、定番のクリアファイルや文具、雑貨、ディズニーグッズなどなど盛りだくさんです。
売り場は会場内にあるので、お財布をもってお入りください。
ポストカード3種
ポストカードだけでも種類がいろいろあったのですが、私はジョンテニエルのポストカード2種と、ダリのポストカードを買ってきました。
まず、ジョン・テニエルのポストカード1種類目はこちらです。
原作をそのままカードにした王道デザイン。
お値段は 各180円(税込)です。
もう一種類はカラー刷りのポストカード。
首が伸びたり、トランプが動いたり、アリスってやっぱり、こうして雑貨になっても楽しいですよね。
ディズニー映画でも『ふしぎの国のアリス』は子どもの頃にくり返し見ていました。
あとは、ダリのポストカードも。
他のアーティストが描くアリスのカードもありました。
カラー刷りのテニエルとダリ、どちらも 各165円(税込)です、
ミルクのジャム
紹介タグによると、「アリスのおかしなお茶会」の原文にはミルクジャムが登場ているそうです。
席替えしたアリスの座った場所は、
"… as the March Hare had just upset the milk-jug into his plate.”(三月兎がミルクジャムをプレートにひっくり返したばかり)だったとか。
フタにかぶせてある布の絵柄にもいくつか種類があります。
私はハートの女王の挿絵のものにしました。
ジャムの瓶にもお茶会の絵が描かれているので、食べ終わってからも取っておこうかなと思います。
お値段は 1,400円(税込)です。
イングリッシュ・ティー&ショートブレッド
最後に食べ物系をもう一つ。
紅茶のパックとショートブレッドの小箱です。
これもジョン・テニエルの挿絵の種類がいくつかあったと思います。
小箱がとっても可愛くて、赤とブルーグレーの色に、金文字の入った紙の箱。
なかにはイングリッシュ・ティーのパックとショートブレッドが一つずつ入っています。
ちょっとしたお土産にも良さそうです。
お値段は 780円(税込)です。
これはイングリッシュ・ティーを入れて、
ショートブレッドにミルクジャムをつけながら食べる、しかありませんね。
混雑状況・所要時間
8月の夏休み真っただ中(平日夕方前)に行きました。
お客さんはそれなりにたくさんいましたが、不快になるような混雑度合ではなく、ゆっくり自分のペースで観ることができました。
一人になるタイミングもあったくらいです。
所要時間は1時間~1時間半くらいです。
チケット
事前予約でも当日券でも大丈夫のようです。
私は数日前に予約しました。
入場時間が1時間の幅で予約でき、希望の時間帯がいっぱいでもチケット販売会社を替えれば空いていたりします。
事前予約をしても 当日はチケットカウンターでの受付があるのですが、並ばずにスッと終わります。
当日券購入の場合は、少し並んでいたようです。
東京展では、平日と土日祝日でチケット料金が異なります。
平日は一般 2,100円(税込)、土日祝日は2,300円(税込)です。
ロッカー
森アーツセンターギャラリーの場合、「特別展 アリス」の展示会場と同じ階にコインロッカーがあります。
100円玉は必要ですが、両替機があるので事前に用意する必要はありません。
撮影OK、でも条件あり
「特別展 アリス」はほとんどの作品が撮影OKですが、少しルールがあります。
動画はNG、写真は「3作品以上を同じ画面に映しての撮影がOK」です。
つまりは1つの作品だけをアップで映してはいけないということなので、おのずと遠くからの撮影や斜めからの撮影になるかと思います。
これは個人的にも初めて体験したルールでした。
音声ガイドはアプリが断然おすすめ
ナビゲーターは 女優の上戸彩さんと、声優の細谷佳正さんです。
より詳しい情報が知りたい方は音声ガイドを購入するといいとは思いますが、展示作品には説明文が添えられたものがかなりたくさんあるので、正直購入しなくても十分楽しめると思います。
音声ガイドは以下の2種類があります。
- 事前にアプリからダウンロードして自分のスマホで聴く方法
- 当日会場で購入し、音声ガイド機で聴く方法
当日写真をたくさん撮りたい方には、絶対に自分のスマホで聴く方法をおすすめします。
会場で借りる音声ガイド機は、イヤホンではなく電話のように機械本体を自分の耳に当てて聴くタイプのもので、音声ガイドの説明を聞きながらの写真撮影は非常に難しいです。
たいてい撮影したい作品が音声ガイドのスポットだったりするので、事前ダウンロードしてスマホと自分のイヤホンで聴けた方が手が自由になり撮影に手間取りません。
音声ガイドは、
アプリが730円(税込)で、配信期間中は何度でも再生可。
会場レンタルは630円(税込)です。
作品リストはQRコードで
多くの美術展や博物展では会場入り口近くに作品リストの冊子が置いてありますが、「特別展 アリス」では、作品リストは紙ではなくQRコードからPDFで閲覧する形式です。
展示の最初に案内がありますのでお忘れなく。
巡回
「特別展 アリス」は
10月10日(月・祝)まで東京・森アーツセンターギャラリーで開催したあと、12月10日(土)からは大阪・あべのハルカス美術館を巡回予定です。
くわしくは次の開催概要をご覧ください。
開催概要
展覧会名 | 特別展アリス ― へんてこりん、へんてこりんな世界 ― |
公式サイト | ▶ 特別展アリス 特設サイト ▶ 公式Twitter:@2022Alice_JPN |
♥ 東京展 | 2022年7月16日(土)〜10月10日(月) 森アーツセンターギャラリー ▶ 森美術館Twitter:@mori_art_museum |
♥ 大阪展 | 2022年12月10日(土)〜2023年3月5日(日) あべのハルカス美術館 ▶ 美術館Twitter:@harukas_museum |
混雑状況 | 平日昼間は、あまり混んでいませんでした。 |
所要時間 | 1時間~1時間半 |
チケット | 東京展:平日一般 2,100円(税込)/ 土日祝2,300円(税込) 大阪展:一般 1,800円 |
ロッカー | あり(無料・100円玉必要) |
音声ガイド | 会場レンタル:630円(税込・現金のみ) アプリ版:730円(税込)イヤホン持参 女優・上戸彩さん 声優・細谷佳正さん |
撮影スポット | 一部の作品をのぞき、会場内での撮影可(特別ルールあり) |
グッズ | たっぷ充実 |
※お出掛け前に美術館公式サイトをご確認ください
※開催地に指定がないものはすべて東京展の情報です
おまけ1 : 平日限定のプレゼントイベントあり
森アーツセンターギャラリーでは、9月12日(月)~10月7日(金)の各平日、「アリス」や登場人物にちなんだ衣装や小物を身に着けて来場すると各日先着150名で特製ステッカー(非売品)のプレゼントがあるそうです。
その他にも、「特別展アリス」とのコラボメニューやグッズも。
くわしくは特設サイトをご覧ください。
おまけ2:これを機に原作を読もうかな
ルイス・キャロルの『不思議な国のアリス』は小学生ぶり。
『鏡の国のアリス』は一度挫折して以来読めていないので、これを機にまた読んでみようかなと思います。
図書館の児童書コーナー、久しぶりに行きました^^
こういう派生した楽しみも乙ですね。
♥
♣
♦
♠
▼ こちらの文庫もジョン・テニエル挿絵の『不思議の国のアリス』のようです。
▼ 1月29日まで 三菱一号館美術館の「ヴァロットン ― 黒と白展」が開催中。
センス抜群のモノクロの世界が、めちゃくちゃ良かったです。
▼ アーディソン美術館の「パリ・オペラ座展」にも行ってきました。
フランス・パリが大好きな方も、バレエが大好きな方も、美術ファンさんも、350年以上のオペラ座の歴史を堪能できます。
常設展もとっても良かったので、おまけに感想を載せました。
▼ 国立西洋美術館の「ピカソとその時代展」は今年いちばんというくらい好きな展覧会でした。
ピカソの女性の絵画はやっぱり衝撃的によかったし、パウル・クレーの多色絵画も綺麗すぎました…!
▼ 「リヒター展」にも行ってきました。私みたいに「抽象画って難しいな…」と持っている方も楽しめる内容だったと思います。
▼ 大阪では「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」が開催中。その後は宮城県にも巡回予定です。
市民の国・オランダの癒しの風俗画がたくさん展示されていますし、なによりフェルメールのキューピッドは観て後悔のない神聖なオーラのある作品でした。
▼Twitterでは、気ままに美術や読書についてつぶやいていますのでよかったら見てください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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