SOMPO美術館の
「ウジェーヌ・ブーダン展 ― 瞬間の美学、光の探求」に行ってきました。

ブーダンらしい海景画はもちろん、建物・人物・動物など海以外を主題とした作品や、数多くの素描まで、多様なブーダン作品が集められた約30年ぶりの回顧展!
見ごたえたっぷりの展覧会になっています。
| この記事は美術展で個人的に好きになった作品の画像と共に、会場解説・音声ガイド・図録なども参考にしながら、勉強日記のような感覚で感想を書いたものです。 ネタバレを避けてグッズなどの展覧会情報だけを知りたい方は「ウジェーヌ・ブーダン展 情報」までジャンプしてください。 |
「ウジェーヌ・ブーダン展」 感想
空の王者、ウジェーヌ・ブーダン
展示内解説(部分)
ウジェーヌ・ブーダン(Eugène Boudin(1824-1898)は、フランス・ノルマンディー地方の港町オンフルールに、水夫の息子として生まれました。
文房具店で働く傍ら趣味でデッサンを始め、バルビゾン派との交流を経て本格的に画家を志すようになったブーダン。
パリでの3年間の修行時代に、17世紀オランダの風景画や動物画に学び、以降はノルマンディー各地を拠点に海景画を中心とした作品を制作しました。
移ろいゆく空と光の様相を表情豊かに描いたブーダンは、同時代の芸術家から「空の王者」と称される画家となりました。
また、モネに戸外制作を教え、印象派誕生に大きく貢献したことから「印象派の先駆者」としても位置付けられています。
海景画のイメージが強いブーダンですが、本展では人物・建物・動物といった海以外を主題とする作品もたくさん並びました。
そんな中から個人的に印象に残ったものをいくつか記録に残しておきたいと思います。
帆船の習作、夜
ウジェーヌ・ブーダン《帆船の習作、夜》1869-73年 油彩/板, 個人蔵
ブーダンと言えば、画面いっぱいの空と海を主題とする海景画が有名です。
なかでも「帆船」はブーダンを巨匠へと押し上げた主要なモチーフの一つとなっています。
1869年から72年、40代半ばのブーダンは、フランス最大の軍港ブレストに滞在しました。
《帆船の習作、夜》はちょうどその頃に描かれた作品です。
時間の経過とともに表情を変える海と光の効果、優美な商船に関心を寄せたブーダンですが、このときの経験がのちのブーダン作品における重要な要素となったそうです。
海景
ウジェーヌ・ブーダン《海景》1883年 油彩/カンヴァス, ディエップ美術館
本展で展示されたブーダンの「帆船」作品のなかでは、こちらの《海景》がいちばん好きでした。
空・雲・海・帆船とブーダンを象徴するモチーフが並びます。
画面の半分以上を占める空には雲が多く、だからこそ雲の隙間から見える鮮やかな水色が際立っていて、いまにも海風に雲が流れていきそうな臨場感あふれる作品でした。
ウジェーヌ・ブーダン《海景》部分
この作品が描かれる少し前の1882年、パリにアトリエを構えたブーダンは大画面の制作に本格的に取り組むようになったそうです。
着想源となったル・アーヴル(フランス北西部の大西洋に臨む港湾都市)へたびたび赴き、海景の習作を重ねました。
干潮
ウジェーヌ・ブーダン《干潮》1884年 油彩/カンヴァス, サン=ロー美術館
《干潮》は、ブーダンにとって初めて国家買い上げとなった作品です。
戸外制作を重視していたために大画面の作品が少なめなブーダンですが、本作は異例の大きさで描かれました。
夕日の赤色が徐々に沈んでゆき、静かに少しずつ夜の気配に覆われていく空模様が何とも美しい作品でした。
会場の壁に記されていたブーダンの言葉が印象に残っています。
大空を泳ぐこと。雲のやさしさへたどり着くこと。
灰色の霞のはるか奥に浮かぶ塊を、宙にとどめ、青空を炸裂させること。
ル・クロワジック
ウジェーヌ・ブーダン《ル・クロワジック》1897年 油彩/カンヴァス, アンドレ・マルロー近代美術館
同時代の芸術家たち― ギュスターヴ・クールベ、カミーユ・コロー、シャルル・ボードレール等 から「空の王者」と称えられたブーダン。
そんな彼の最晩年の作品が《ル・クロワジック》です。
ブーダンにとって青色は「希望の色」でした。
"大空を泳ぐ" "青空を炸裂させる"
たとえ荒天を描く時にも、ブーダンは希望の色である「青色」を意識的に入れるようにしていたそうです。
人物のある風景(ブーダン夫人とモネ一家)
ウジェーヌ・ブーダン《人物のある風景(ブーダン夫人とモネ一家》1875-77年頃 油彩/板, ウジェーヌ・ブーダン美術館
ブーダンが「印象派の先駆者」と呼ばれる所以は、モネに戸外制作を教えたことでした。
ブーダンが17歳の青年クロード・モネと出会ったのは1856年。
当時、戯画や風刺画を描いて生計を立てていたモネを浜辺へ連れ出し、空と海の光が絶えず変化する様を示して戸外制作を熱心に薦めました。
のちにモネは戯画を辞めて風景画家への道を歩みますが、後年、この出会いについて 「自分が画家になれたのはブーダンのおかげ」だと語っているそうです。
《人物のある風景(ブーダン夫人とモネ一家》はそんなモネとブーダンの親交を表したような作品でした。
カイユーの風車
ウジェーヌ・ブーダン《カイユーの風車》1890年 油彩/板, 個人蔵
本展で楽しかったのは、ブーダンの海以外の表現や素描の数々にたくさん触れられたことです。
個人的に特に惹かれたのが建物を描いた作品たちで、《カイユーの風車》もその一つでした。
古びたように見える風車と、のんびり佇む牛たち、小さな家々。
背後に大きく描かれている空はほとんどが厚い雲に覆われていますが、風車の真上に雲の裂け目があることで、この後お日様が顔を出してくれるかもしれないという明るい希望を呼び起こします。
ブーダンは海景を描く傍ら、石造や木造の建築物も生涯にわたって描き続けたのだそうです。
いちばん好きだった作品
ウジェーヌ・ブーダン《コルドリーの道、トルーヴィル》1878年 油彩/カンヴァス, ブーローニュ=シュル=メール市立
美術館
本展で個人的にいちばん惹かれた作品は、風景画《コルドリーの道、トルーヴィル》です。
空の青に加え、木々が生み出す陰にも青が遣われていて、澄んだ空気に包まれているようです。
雨上がりなのか、道に空の青が映り込んで、雫に光が反射してキラキラ煌めいているようにも見えます。
住人たちの日常の一瞬を写し取ったような、のどかで平和な雰囲気がとても好きでした。
「ウジェーヌ・ブーダン展 ― 瞬間の美学、光の探求」。
ブーダンの海と空はやっぱり凄かった!
それに加えて、美術史に興味のある私にとっては、ブーダンが「印象派の先駆者」と言われる理由を多種多様な作品を通して実感できたことがとても嬉しいです。
ブーダンまみれの見ごたえたっぷりの展覧会、とても楽しかったです。
おまけ
ウジェーヌ・ブーダン《トルーヴィルの浜》1867年 油彩/カンヴァス 国立西洋美術館蔵(2024年の常設展で撮影)
※本展には展示されていません
トルーヴィルといえば、ブーダンの代表作、海水浴場を描いた作品群を思い出しました。
国立西洋美術館の常設展にある《トルーヴィルの浜》にもまた会いたくなってきました!
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「ウジェーヌ・ブーダン展」情報
グッズ

ブーダン展のグッズは種類が少なくて、私はポストカードを3枚だけ買ってきました
1枚 165円(税込) でした。
SOMPO美術館50周年記念グッズのほうが種類は豊富だったかもしれません。
SOMPO美術館のミュージアムショップは展示会場の「中」にありますので、お財布を持ってお入りください。
混雑状況
4月下旬、平日の夕方に行きました。
混雑しておらず、静かにゆったりと鑑賞できました。
チケット
チケットは当日券と事前購入券があります。
- 一般:当日窓口 2,000円 (税込)
- 一般:事前購入券 1,800円 (税込)
SOMPO美術館では窓口購入でも絵柄チケットが貰えるわけではないので、200円安くなる事前購入券(オンライン券)のほうをおすすめします。
所要時間
所要時間は1時間半~2時間程度です。
私はすべての解説にざっと目を通しつつ、一部作品の写真撮影をしながらフロアを2周くらいして1時間半強かかりました。
ロッカー
SOMPO美術館ではロッカーを利用できます。
ロッカーは無料の鍵式で 100円玉は不要です。
音声ガイド
本展に音声ガイドはありません。
撮影スポット
新宿駅側からSOMPO美術館へ向かう交差点の看板と、

SOMPO美術館の入口が定番の撮影スポットです。

その他、展示会場では最初のセクション「I. 海景 ― 海景画家の誕生」のみ撮影できました。
巡回
2026年から2027年にかけて「東京 ⇒ 長野 ⇒ 山梨 ⇒ 群馬 ⇒ 京都」と全国巡回予定です。
詳しくは次の展覧会情報まとめをご覧ください。
展覧会情報まとめ
お出かけ前に美術館公式サイトをご確認ください。
下記はすべて東京展の様子です。
展覧会名
ウジェーヌ・ブーダン展 ― 瞬間の美学、光の探求
東京会場
会期
2026年4月11日(土) ~ 6月21日(日)
開室時間
10:00 – 18:00
※金曜日は20:00まで
※入場は閉館30分前まで
休室日
月曜日
所要時間
1時間半~2時間程度
チケット
当日窓口 一般 2,000円 (税込)
事前購入券 一般 1,800円 (税込)
音声ガイド
なし
ロッカー
無料/100円玉必要なし
混雑状況
混雑しておらず落ち着いて鑑賞できた
※4月下旬の平日夕方の様子
グッズ
ラインナップは少なめ
※展示会場「内」のミュージアムショップにて
※ショップのみの利用は不可
写真撮影
展示会場内のセクションⅠのみ撮影可
巡回情報
松本市美術館
2026年7月7日(火)〜 8月30日(日)予定
山梨県立美術館
2026年9月12日(土)〜 11月3日(火・祝)予定
群馬県立近代美術館
2026年11月28日(土) 〜 2027年1月31日(日)予定
美術館「えき」KYOTO
2027年2月14日(土) 〜 3月22日(日)予定
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関連情報
●チュルリョーニス展 内なる星図
国立西洋美術館で2026年6月14日(日) まで開催中。
作曲家でもあるチュルリョーニスが描く音楽と絵画が融合した抽象絵画。
その神秘的な雰囲気といったら!
一瞬で人知をこえたファンタジーの世界に連れて行ってくれる展覧会でした。

●アンドリュー・ワイエス展
東京都美術館で2026年7月5日(日) まで開催中。
その後、12月6日(日)まで愛知⇒大阪を巡回予定。
父と幼い甥を事故で亡くしたことをきっかけに抱いた「死生観」、すべては移り変わり、決して立ち止まってはくれないという「無常観」。
それらは窓や扉などといった「境界」を暗示するモチーフとして表され、作品たちに漂う、切なくも暖かな空気が心に響きました。

●カール・ヴァルザー展
東京ステーションギャラリーで 2026年6月21日(日) まで開催中。
その後、7月4日(土) から大阪中之島美術館へ巡回予定。
スイスで再評価が進んでいる画家カール・ヴァルザーの日本初の大回顧展です。
可愛らしさと奇妙さがマッチした独特の作風が魅力的でした。

●大ゴッホ展 夜のカフェテラス
上野の森美術館で2026年8月12日(水)まで開催中。
激混みでしたが、《夜のカフェテラス》を間近で見られたので後悔はありません。
グッズも可愛いので気力がある方は是非。

● モネ展(2023/2024)
やぱりブーダンとくればモネでしょう。
ブーダンがモネに戸外制作を薦めた功績は計り知れません。
これがなかったらモネのあの作品たちが生まれていない可能性もあったなんて。


●テート美術館所蔵 コンスタブル展(2021)
今回のブーダン展をみて数年前のコンスタブル展のことを思い出しました。
コンスタブルはブーダンよりも50年くらい前に生まれたイギリス画家ですが、この時代に早くも戸外制作を重視しています。
バルビゾン派に影響を与えた画家であり、空を描いた画家。
コンスタブル ⇒バルビゾン派 ⇒ブーダン ⇒印象派と、影響の連鎖を見るようです。
https://mumuject-oriented.com/constable-2021/
▼ 2020年から現在まで、観に行った美術展の感想はこちらにまとめています

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最後まで読んでいただきありがとうございました。
美術展や読書記録の X もやっているので、よければ遊びに来ていただけると嬉しいです。
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( ・ω・ )/ SOMPO美術館は移動ルートにも抜かりなし♪
