SOMPO美術館の
「ウジェーヌ・ブーダン展 ― 瞬間の美学、光の探求」に行ってきました。

ブーダンといえばの海景画が素晴らしいことは言わずもがな。
さらに加えて、海景以外の作品たち(建物・人物・身近なものたち)や数多くの素描までたくさんの作品が並べられた、見ごたえたっぷりの展覧会になっています。
| この記事は美術展で個人的に好きになった作品の画像と共に、会場解説・音声ガイド・図録なども参考にしながら、勉強日記のような感覚で感想を書いたものです。 ネタバレを避けてグッズなどの展覧会情報だけを知りたい方は「ウジェーヌ・ブーダン展 情報」までジャンプしてください。 |
「ウジェーヌ・ブーダン展」 感想
空の王者、ウジェーヌ・ブーダン
展示内解説(部分)
ウジェーヌ・ブーダン(Eugène Boudin(1824-1898)は、フランス・ノルマンディー地方の港町オンフルールに、水夫の息子として生まれました。
文房具店で働く傍ら趣味でデッサンを始め、バルビゾン派との交流を経て画家を志すようになったブーダン。
パリでの3年間の修行時代に17世紀オランダの風景画や動物画に学び、以降はノルマンディー各地を拠点に沿岸風景を中心に作品を制作しました。
移ろいゆく空と光の様相を表情豊かに捉えたブーダンの作品は、のちに同時代の芸術家に「空の王者」と言わしめました。
また、モネに戸外制作を教え、のちの印象派誕生に大きく貢献したことから「印象派の先駆者」としても位置付けられています。
海景画のイメージが強いブーダンですが、本展では人物や建物、動物といったイメージとはまた違った主題の作品もたくさん並びました。
そんな中から個人的に印象に残ったものをいくつか記録に残しておきたいと思います。
帆船の習作、夜
ウジェーヌ・ブーダン《帆船の習作、夜》1869-73年 油彩/板, 個人蔵
ブーダン作品のことをお話しするのに、海景画を外すのは難しいですよね。
本展でもブーダンの海景画はやっぱり凄いの一言でした。
1869年から72年、40代半ばのブーダンは、フランス最大の軍港ブレストに滞在。
時間の経過とともに表情を変える海と光の効果、優美な商船に関心を示しました。
《帆船の習作、夜》はちょうどその頃に描かれた作品です。
この経験はのちのブーダン作品における重要な要素となったそうで、とくに「帆船」はブーダンを巨匠へと押し上げた主要なモチーフのひとつとなりました。
海景
ウジェーヌ・ブーダン《海景》1883年 油彩/カンヴァス, ディエップ美術館
本展で展示されたブーダンの「帆船」作品のなかでは、こちらの《海景》がいちばん好きでした。
空・雲・海・帆船とブーダンを象徴するモチーフが並びます。
画面の半分以上を占める空には雲が多く、だからこそ雲の隙間から見える鮮やかな水色が際立っていて、いまにも海風が吹いてきそうな臨場感あふれる作品でした。
ウジェーヌ・ブーダン《海景》部分
この作品が描かれる少し前の1882年、パリにアトリエを構えたブーダンは大画面の制作に本格的に取り組むようになったそうです。
着想源となったル・アーヴル(フランス北西部の大西洋に臨む港湾都市)へたびたび赴き、海景の習作を重ねました。
干潮
ウジェーヌ・ブーダン《干潮》1884年 油彩/カンヴァス, サン=ロー美術館
《干潮》は、ブーダン初の国家買い上げとなった作品です。
戸外制作を多く行っていたために大画面作品が少ないブーダンですが、本作は異例の大サイズで描かれました。
夕日の赤色が徐々に沈んでゆき、すこしずつ静かに夜の気配に包まれていく空模様が何とも美しい作品でした。
会場の壁に記されていたブーダンの言葉が印象に残っています。
大空を泳ぐこと。雲のやさしさへたどり着くこと。
灰色の霞のはるか奥に浮かぶ塊を、宙にとどめ、青空を炸裂させること。
ル・クロワジック
ウジェーヌ・ブーダン《ル・クロワジック》1897年 油彩/カンヴァス, アンドレ・マルロー近代美術館
同時代の画家であるギュスターヴ・クールベ、カミーユ・コロー、詩人シャルル・ボードレールらが「空の王者」と呼んだブーダンの、最晩年の作品が《ル・クロワジック》です。
ブーダンにとって青色は「希望の色」でした。
"大空を泳ぐ"、"青空を炸裂させる"……、
たとえ荒天を描く時にも、ブーダンは希望の色である「青色」を意識的に入れるようにしていたのだそうです。
人物のある風景(ブーダン夫人とモネ一家)
ウジェーヌ・ブーダン《人物のある風景(ブーダン夫人とモネ一家》1875-77年頃 油彩/板, ウジェーヌ・ブーダン美術館
ブーダンが「印象派の先駆者」と呼ばれる所以は、モネに戸外制作を教えたことでした。
ブーダンが17歳の青年クロード・モネと出会ったのは1856年。
当時、戯画や風刺画を描いて生計を立てていたモネを浜辺へ連れ出し、空と海の光が絶えず変化する様を示して戸外制作を熱心に薦めました。
のちにモネは戯画を辞めて風景画家の道へ進みますが、後年、この出会いについて 「自分が画家になれたのはブーダンのおかげ」だと語っているそうです。
《人物のある風景(ブーダン夫人とモネ一家》はそんなモネとブーダンの親交を表したような作品でした。
カイユーの風車
ウジェーヌ・ブーダン《カイユーの風車》1890年 油彩/板, 個人蔵
本展で楽しかったのは、ブーダンの海以外の表現や素描の数々にたくさん触れられたことです。
とくに個人的に惹かれたのが建物を描いた作品たちで、《カイユーの風車》もその一つでした。
古びたように見える風車と、周りを囲む牛たち、そして小さな家々。
背後に大きく描かれている空はほとんどが厚い雲に覆われていますが、風車の真上の青色が、このあとお日様が顔を出すかもしれないという期待を呼び起こします。
ブーダンは海景を描く傍ら、石造や木造の建築物を苦手と自覚しつつも生涯にわたって描き続けたのだそうです。
いちばん好きだった作品
ウジェーヌ・ブーダン《コルドリーの道、トルーヴィル》1878年 油彩/カンヴァス, ブーローニュ=シュル=メール市立
美術館
本展で個人的にいちばん惹かれた作品は、風景画《コルドリーの道、トルーヴィル》です。
空の青に加え、木々が生み出す陰にも青が遣われていて、澄んだ空気に包まれているようです。
住人たちの日常の一瞬を写し取ったような、のどかで平和な雰囲気がとても好きでした。
トルーヴィルといえば、ブーダンの代表作、1860年代から精力的に制作された海水浴場を描いた作品群を思い出します。
国立西洋美術館の常設展で観た《トルーヴィルの浜》にまた会いたくなってきました。
ウジェーヌ・ブーダン《トルーヴィルの浜》1867年 油彩/カンヴァス 国立西洋美術館蔵
※本展に展示はありません
「ウジェーヌ・ブーダン展 ― 瞬間の美学、光の探求」。
ブーダンの海と空はやっぱり凄かった!
それに加えて、ブーダンが「印象派の先駆者」と言われる理由を作品を通して実感できたことで、美術史に興味深々な私にとってはまさに「実学」できたな、という充実感がありました。
ブーダンまみれの見ごたえたっぷりの展覧会、とても楽しかったです。
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「ウジェーヌ・ブーダン展」情報
グッズ

ブーダン展のグッズは種類が少なくて、私はポストカードを3枚だけ買ってきました
1枚 165円(税込) でした。
SOMPO美術館50周年記念グッズのほうが種類は豊富だったかもしれません。
SOMPO美術館のミュージアムショップは展示会場の「中」にありますので、お財布を持ってお入りください。
混雑状況
4月下旬、平日の夕方に行きました。
混雑しておらず、静かにゆったりと鑑賞できました。
チケット
当日窓口での購入は 一般 2,000円 (税込) 。
オンライン事前購入券は 一般 1,800円 (税込) です。
SOMPO美術館では窓口購入でも絵柄チケットが貰えるわけではないので、200円安くなるオンライン事前購入券のほうをおすすめします。
所要時間
所要時間は1時間半~2時間程度です。
私はすべての解説にざっと目を通しつつ、一部作品の写真撮影をしながらフロアを2周くらいして1時間半強かかりました。
ロッカー
SOMPO美術館ではロッカーを利用できます。
ロッカーは無料の鍵式で 100円玉は不要です。
音声ガイド
本展に音声ガイドはありません。
撮影スポット
新宿駅方面からSOMPO美術館へ向かう交差点の看板と、

SOMPO美術館の入口が定番の撮影スポットです。

その他、展示会場では最初のセクション「I. 海景 ― 海景画家の誕生」のみ撮影できました。
巡回
2026年から2027年にかけて「東京 ⇒ 長野 ⇒ 山梨 ⇒ 群馬 ⇒ 京都」と全国巡回予定です。
詳しくは次の展覧会情報まとめをご覧ください。
展覧会情報まとめ
お出かけ前に美術館公式サイトをご確認ください。
以下はすべて東京展の情報です。
| 展覧会名 | ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求 |
| ● 東京 |
2026年4月11日(土) ~ 6月21日(日) |
| 開室時間 |
10:00 – 18:00(金曜日は-20:00) |
| 休館日 |
月曜日 |
| 混雑状況 | 混雑なし(4月下旬の平日夕方) |
| 所要時間 | 1時間半~2時間程度 |
| チケット |
一般(当日窓口) 2,000円 (税込) |
| ロッカー | 無料/100円玉不要 |
| 音声ガイド | なし |
| 撮影 スポット |
あり 会場内はセクションⅠのみ撮影可 |
| グッズ |
展示会場の「中」にある特設ショップにて |
| 巡回 |
東京 ⇒ 長野 ⇒ 山梨 ⇒ 群馬 ⇒ 京都 |
| ● 長野 |
2026年7月7日(火) 〜 8月30日(日) |
| ● 山梨 |
2026年9月12日(土) 〜 11月3日(火・祝) |
| ● 群馬 |
2026年11月28日(土) 〜 2027年1月31日(日) |
| ● 京都 |
2027年2月14日(土) 〜 3月22日(日) |
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関連情報
●「テート美術館- YBA&BEYOND 世界を変えた90s 英国アート」
国立新美術館で2026年5月11日(月)まで開催中です。
1980年代後半から2000年代初頭にかけて制作された「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」たちの作品展です。
ちょうど自分が生まれてから小中学校くらいまでの時代、まだまだ子どもだった私には実感できなかった、おそらく父や母が感じてきた社会の空気があるような気がして、すこしそわそわしてしまいました。

●「チュルリョーニス展 内なる星図」
国立西洋美術館で2026年6月14日(日) まで開催中。
作曲家でもあるチュルリョーニスが描く音楽と絵画が融合した抽象絵画。
その神秘的な雰囲気といったら!
一瞬で人知をこえたファンタジーの世界に連れて行ってくれる展覧会でした。

● モネ展(2023/2024年)
やぱりブーダンとくればモネでしょう。
ブーダンはモネに戸外制作を薦めた功績は計り知れません。
これがなかったらモネのあの作品たちが生まれていない可能性もあったなんて。


●「テート美術館所蔵 コンスタブル展」(2021年)
今回のブーダン展をみて数年前のコンスタブル展のことを思い出しました。
コンスタブルはブーダンよりも50年くらい前に生まれたイギリス画家ですが、この時代に早くも戸外制作を重視しています。
バルビゾン派に影響を与えた画家であり、空を描いた画家。
コンスタブル ⇒バルビゾン派 ⇒ブーダン ⇒印象派と、影響の連鎖を見るようです。
https://mumuject-oriented.com/constable-2021/
▼ 2020年から現在まで、観に行った美術展の感想はこちらにまとめています

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最後まで読んでいただきありがとうございました。
美術展や読書記録の X もやっているので、よければ遊びに来ていただけると嬉しいです。
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( ・ω・ )/ SOMPO美術館は移動ルートにも抜かりなし♪
