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美術館めぐり

『渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-』の感想・グッズ・所要時間・混雑状況

渡辺省亭展-感想-グッズ-所要時間-混雑状況
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東京藝術大学大学美術館に
『渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-』を観に行きました。

 

渡辺省亭展-感想-グッズ-所要時間-混雑状況美術館正門から撮影

 

チラシの牡丹の花を観たときから行くと決めていた美術展。
期待を上まわる、美しい花鳥美人画に囲まれた展覧会でした。

 

『渡辺省亭展』 感想

渡辺省亭ってどんなひと?

恥ずかしながら、渡辺省亭(わたなべせいてい)という日本画家の存在をはじめて知った私です。

日本よりも海外で評価されてきた画家なのだそうです。

 

渡辺省亭(わたなべせいてい・1851~1918)。
江戸後期に生まれ、明治・大正にかけて活躍した日本画家。
1878(明治11)年、日本画家としてはじめてパリを訪れる
赤坂離宮に作品が飾られるほどの実力の持ち主ながら、晩年に画壇と距離を置いて国内の展覧会に出品しなかったため、一般にあまり知られてこなかった。
近年、再評価を受けはじめている。
パリ滞在中、省亭の画力にドガなどおおくの印象派の画家たちが驚愕したらしい。
生涯浅草暮らし。絵だけでなく書道も達者。
人づきあいが嫌いで、弟子を取らなかったのもそれが理由のひとつらしい。

 

リアルで精巧な日本画

展覧会をとおして、一般にあまり知られてこなかったとは思えないすさまじい画力色彩感覚に驚くしかありませんでした。

 

渡辺省亭の描く花鳥画は、そのどれもが写実的で細かなところまで精巧に表現されていて、リアリティがありつつも色づかいが美しいものばかりです。

 

渡辺省亭-迎賓館赤坂離宮・七宝額原画《淡紅鸚哥に科木》迎賓館赤坂離宮・七宝額原画《淡紅鸚哥に科木》東京国立博物館蔵/TNM Archives(加工あり)
前期展示:3月27日(土)~4月25日(日)

 

これは迎賓館赤坂離宮の「花鳥の間」に飾られている七宝作品の原画ですが、注目すべきはこの色づかい。

ベタ塗りが主な日本画で、さらには七宝額の原画でありながらグラデーションに塗られていますね。

 

渡辺省亭-迎賓館-赤坂離宮-七宝迎賓館赤坂離宮HPより

 

この原画をもとに赤坂離宮に飾られた七宝は、渡辺省亭が下絵を描き、七宝焼きの天才といわれた涛川惣助(なみかわ そうすけ)が焼いたもので、表面に金属を使わない「無線七宝」という特殊な手法をもちいた七宝の最高傑作と謳われています。

 

出だしにしてこの展覧会に来てよかったなと思わせてくれました。

 

ちなみにこのピンク色の鳥はオーストラリアのインコだそうです。

 

印象画家たちも驚いた画力

渡辺省亭はしばしば、動物や海の幸といった西洋のモチーフを日本画におとしこむなど、海外にまで視野を広げていました。

 

1878(明治11)年、パリ万博に参加するために日本画家としていち早く海外を訪れています。

 

渡辺省亭-《鳥図(枝にとまる鳥)》-ドガ渡辺省亭《鳥図(枝にとまる鳥)》1878(明治11)年 クラーク美術館蔵 Clark Art Institute. clarkart. edu

 

こちらは省亭が印象派の画家ドガの目の前で描きプレゼントした作品だといわれています。
左には「為ドガース君 省亭席画」と記してあります。

 

省亭がパリを訪れた当時、フランスではちょうど印象派が全盛期を迎えた頃でした。
省亭の描く花鳥画は印象派の画家たちにも大きな影響を与えたそうです。

 

印象画家マネの弟子であるジュゼッペ・デ・ニッティスが、模写をするために省亭の日本画を買い取ったものの技術が難しすぎて模写を諦めた

というエピソードが残されています。

 

日本画に「グラデーション」と「遠近法」をプラス

こちらのフクロウの作品は展覧会でもかなりインパクトがありました。

日本画でありながら、目には白い絵具でハイライトが入ったいたり羽毛の細かな筆づかいが強く印象に残ります。

 

渡辺省亭-《月夜木菟》渡辺省亭《月夜木菟》個人蔵

 

「洋画は形態を写すのみで趣味がなく、日本画は趣味のみである」

 

そう考えていた省亭は、洋画のグラデーションや遠近法などを巧みに取り入れながら、あくまでも日本画を描き続けました。

 

西洋のジャポニズムの流行にはのらず、欧米に好かれる画風ではなく「日本人の美意識」に寄り添う作品を作り続けたのだそうです。

 

渡辺省亭-《柳に雀図》渡辺省亭《柳に雀図》マルコム・フェアリー蔵

 

日本の素朴な趣と、西洋のデッサンと色づかいがマッチした省亭の作品は、他の日本画から逸脱した独自の魅力をかもしだしています。

 

かわいい花鳥画

渡辺省亭の描く花鳥画は、綿密でリアリティがあるだけでなく、かわいくて綺麗なのが魅力だと思います。

 

こちらの《藤に小禽図》も、リアルな動きをとらえた愛らしい鳥と、藤の花の鮮やかで透明感のある青がとっても素敵でした。

 

渡辺省亭-《藤に小禽図》渡辺省亭《藤に小禽図》メトロポリタン美術館蔵

 

本展で展示されている作品のおおくが「」に「岩絵具」をうすく何度も塗り重ねて描かれてます。

 

紙に描くのとは違った絹そのものテカリや、絹に絵具が染みた発色が趣のあるいい味をだしていて、ずっと眺めていられるなと思いました。

 

渡辺省亭-《鰈図》渡辺省亭《鰈図》メトロポリタン美術館蔵

 

この《鰈図》は、英語では《Jumping fish》というタイトルです。

色数こそ少なめながら、魚がイキイキしていて躍動感がありつつ、どこかくすっとわらってしまう愛らしさ。

 

省亭の絵は、どれもかわいいんですよね。

 

美人画もかわいい

花鳥画の名手であった省亭ですが
しばしば「美人画」も描いていて、本展でもたくさん観ることができます。

 

これがまたすっごく良いんです。

 

渡辺省亭-《四季江戸名所(冬 墨堤の雪)》渡辺省亭《四季江戸名所(冬 墨堤の雪)》(部分)個人蔵

 

どの女の人もシュッとしていて淡泊なお顔がとても美人さん。

かっこよくてかわいくて「お江戸の粋な女性」の気品があり、どの美人画も甲乙つけがたいほど好きになりました。

 

画壇を離れ、個人の床の間を飾る渡辺省亭

こんなに魅力的な絵を描く人が日本で有名じゃないなんて信じられません。

 

しかし事実、渡辺省亭の作品はアメリカのメトロポリタン美術館やボストン美術館、大英博物館に収蔵されるなど海外でこそ高く評価されている一方で、日本ではあまり知られてきませんでした。

 

本展のような大規模な回顧展が開催されるのも今回が初めてのことです。

 

渡辺省亭-《牡丹に蝶の図》渡辺省亭《牡丹に蝶の図》1893(明治26)年 個人蔵

 

その理由は、晩年に国内の画壇を離れて展覧会に参加しなかったことや、人付き合いのわずらわしさを嫌い弟子もとらず、「個人の床の間を飾る画家」として活動してきたことが考えられます。

 

そんな渡辺省亭が、近年ようやく再評価されはじめています。

 

2021年はそんな渡辺省亭の再評価元年の年になるかもしれないとのこと。

 

貴重な機会を体験できたことを大変うれしく思いました。

とってもきれいで素晴らしい作品と出会えて、楽しかったです。

 

『渡辺省亭展』情報

グッズ

渡辺省亭展-グッズ

 

『渡辺省亭展』のグッズコーナーは、美術館入り口(展示会場入り口)に設けられているのですぐにわかると思います。

 

種類はそれほどおおくはありませんが、ポストカードやマスクケースなど定番はそろっていました。

わたしはポストカードを購入です。

 

混雑・所要時間

日曜日の14時くらいに行きました。

事前予約なしに行きましたが、あまり混雑しておらず
ひとつの絵をひとりでゆっくり観ることができました。

 

所要時間は、1時間~1時間半くらいです。

 

チケット・音声ガイド

展覧会の絵柄の紙チケットをもらえます。
やっぱりうれしいですね。

 

音声ガイドは、あるとどっぷりと知識に浸れるのでとってもオススメです。

渡辺省亭をむかしから推しているという、明治学院大学教授の山下裕二さんのお話がおもしろかったです。

「2021年が渡辺省亭の再評価の元年になる」とおっしゃっていたのは山下教授です。

 

ロッカーは使用できないので注意

東京藝術大学大学美術館では、コロナのためロッカーの貸し出しを中止していました。
お荷物にはご注意ください。

 

展示替えあり

本展は4月の下旬を境に展示替えがあります。

展示替え期間
3/27-4/254/27-5/23
☞ 前期だけ観られる:38作品
☞ 後期だけ観られる:30作品

 

撮影スポット

渡辺省亭展-撮影スポット

 

展示の最後に、展覧会ポスターを撮影できるコーナーがありました。
休憩スペースにもなっているのですこし座って上野公園を眺めたりもできます。

 

せっかくなので、東京藝大の正門と一緒に撮ってみました。

 

開催情報

展覧会名 渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-
Watanabe Seitei: Brilliant Birds, Captivating Flowers
公式サイト 特設サイトTwitter
会場 東京展
東京藝術大学大学美術館
会期 2021年3月27日(土)~5月23日(日)
☞ 展示替え:3/27-4/25|4/27-5/23
チケット 一般 1,500円
音声ガイド 安井邦彦さん/600円税込(収録約30分)
※展示替えに伴い、一部ガイド内容が変わります。
※東京展のみ実施。
グッズ 美術館チケット売り場前に特設コーナーあり。
種類はそんなにないけど、定番グッズはそろっています。
撮影スポット 展示会場の最後にポスターの撮影ができます。
その他 ロッカー使用中止です。
巡回 愛知展
会場:岡崎市美術博物館
HP:特設サイト / Twitter
会期:2021年5月29日(土)~7月11日(日)
静岡展
会場:佐野美術館
HP:特設サイト / Twitter
会期:2021年7月17日(土)~8月29日(日)

※公式サイトをご確認ください

 

関連情報

『渡辺省亭展』の公式ガイドブックです。
省亭作品がまとめられた本は少ないので貴重な一冊になりますね。

 

三菱一号館美術館では 5月30日(日)まで『コンスタブル展』が開催中です。
雲の画家と言われたコンスタブルとの素朴な風景画に癒されます。

 

 

全国を行脚している『ミイラ展』。現在は福岡を巡回中です。

 

 

『渡辺省亭展』が東洋の花鳥画なら、西洋の花鳥画はこれかもしれません。
3月まで大阪で開催していた『リヒテンシュタイン展』の花の静物画と省亭の花鳥画を比べてみるのもおもしろいかも。

 

 

日本の伝統と西洋の技術が合わさった芸術家といえば、「吉田博」ですね。
省亭とはちがって、こちらは西洋の要素を強く感じる気がします。

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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