国立新美術館の
「テート美術館 - YBA&BEYOND 世界を変えた90s 英国アート」に行ってきました。

久しぶりの現代アート!
全く詳しくないのですが、絵画を観るのとはまた違った体験ができておもしろかったです。
今回は、展示作品のなかから印象に残った作品を数点をピックアップして感想を書いてみました。
| この記事は美術展で個人的に好きになった作品の画像と共に、会場解説・音声ガイド・図録なども参考にしながら"勉強日記"のような感覚で感想を書いたものです。 ネタバレを避けてグッズなどの展覧会情報だけを知りたい方は「YBA&BEYOND 世界を変えた90s 英国アート 情報」までジャンプしてください。 |
「YBA&BEYOND 世界を変えた90s 英国アート」 感想
「YBA」とは?
本展は、1980年代後半から2000年代初頭にかけて制作された英国美術に焦点が当てられた展覧会です。
タイトルにある「YBA」とは「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」を指します。
サッチャー政権(1979-90年)で失業率が悪化するなど暗雲が立ち込めていた英国社会において、YBAと呼ばれたアーティストたちは、全く新しい視点で素材を選び、制作した作品を積極的に発表していったそうです。
本展では、そんなYBAの作家たちや彼らと同世代のアーティストたちによる、絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションなど様々な作品を堪能できる展覧会になっています。
約60名のアーティストによるおよそ100点の展示作品のなかから、個人的に気になった作品をまとめました。
フランシス・ベーコンの絵画
フランシス・ベーコン《1944年のトリプティック(三幅対)の第2ヴァージョン》1988 油彩,エアゾール塗料,カンヴァス テート美術館蔵
フランシス・ベーコン(1909-92年)は20世紀美術史において最も著名な画家の一人です。
生涯にわたって肉体の表現を追求してきた画家で、ベーコンの「人間の存在の暗部を掘り下げる姿勢」は1990年代当時の英国アーティストたちにインスピレーションを与えたのだそうです。
《1944年のトリプティック(三幅対)の第2ヴァージョン》はベーコン最晩年の作品です。
本展のいちばん最初の展示作品なのですが、まあ、とにかく独特でインパクト大。
肉塊が生命体として動いているような良い意味でちょっと気持ちの悪い感じで、『寄生獣』を思い出しました。
後天的な回避不能
ダミアン・ハーストは1990年代に実際の動物の死体を用いた作品で衝撃を与え、注目を浴びたアーティストだそうです。
死に対して強い関心を持ち、この《後天的な回避不能》はフランシス・ベーコンから多大な影響を受けたハーストの初期の代表作の一つです。
ダミアン・ハースト《後天的な回避不能》1991 テート美術館蔵
ガラスケースの中にオフィス空間を閉じ込めることで「人間の心理的、社会的、もしくは、その存在の本質ゆえ避けることのできないサイクルの中でしか生きられないこと」を暗示し、デスクに置かれている灰皿とライターは、「死をもたらすもののメタファー」なのだそうです。
会社勤めをしている身からして、言わんとしていることがとても伝わりやすい作品だと思いました。

毎日毎日同じオフィスに通い、働く。
こんな生活を辞めたいけれど生きるためにお金は必要だから、辞めたとしてもまた別の何処かで働くしかない、いつまでこんな生活を続ければいいのだろう…。
心が疲れていると、こんなどうしようもない思考になってしまいますよね、日曜日の夜なんかとくに。
凡人の存在意義みたいなものを考えさせられる作品でした。
コインランドリー=ロコモーション
スティーヴン・ビビン《コインランドリー=ロコモーション(スーツ姿で歩く)》はコインランドリーにある洗濯機をカメラに改造して作られた作品です。
作者であるピピンは日用品に対する認識に挑戦する作家であり、家庭用電化製品を利用した創作活動をしているアーティストだそうです。
洗濯機がコインランドリーの中から道行く人々を観察しているような視点がおもしろいなと思いました。
スティーヴン・ビビン《コインランドリー=ロコモーション(スーツ姿で歩く)》1997 テート美術館蔵
家
こちらは モナ・ハトゥムの《家》という作品です。
木製のテーブルに乗せられているのは「スチール製のキッチン用品」で、それらを空間に閉じ込めるように複数の導電性ワイヤーが設置されています。
キッチン用品には電流が流され、小さな音を立てる仕組みになっています。
モナ・ハトゥム《家》1999 テート美術館蔵
「家という環境や家庭、そして女性が暮らす領域は健全であるという意識を打ち砕くもの」を表現しているそうです。
キッチン用具に流れている電流は、骨の折れる家事労働の苦痛や、家事は女性が担うという性別役割分業が生む閉塞感を暗示しています。

妻が出迎える温かい家庭、暖かい料理。
そのようなイメージは時として女性を苦しめる面もあるわけで…そういう性別による分業の話って、昨今SNSでたびたび炎上していますよね。
2026年現在でやっと男女で性差について議論できるくらいにジェンダー意識が変わってきたけど、90年代はまだまだ大変だったのだろうなと思いますね。
コールド・ダーク・マター
現代アートの楽しい部分と言えばやっぱりインスタレーション。
空間を広く使った巨大なアートは没入感があって眺めているだけでわくわくします。
コーネリア・パーカー《コールド・ダーク・マター:爆発の分解イメージ》もとても巨大で迫力がある作品でした。
コーネリア・パーカー《コールド・ダーク・マター:爆発の分解イメージ》1991 テート美術館蔵
パーカーがこの作品に取り組んでいた時期は、北アイルランド紛争が終焉に向かう最後の10年で、英国内で爆破事件が立て続けに起こっていたそうです。
制作にあたり、パーカーは英国陸軍に庭の物置を爆破するよう頼み、その残骸を天井から吊るして電球を設置しました。
パーカーにとって物置小屋は秘密や空想を可能にしてくれる場所であり、物に宿る記憶を蓄積する場でもありました。
それを爆破して作品を作ることによって、破壊と創造を同時に達成した作品なのだそうです。

つるされた物をよく見ると、自転車やおもちゃ、時計など日常的なものばかりでした。
もしかしたら、紛争によって破壊された何気ない日々の平穏を表しているのかもしれないな、と思いました。
知ること
マイケル・クレイグ=マーティン《知ること》は人間の認知を利用しただまし絵チックな作品でした。
日常的に見慣れたモチーフを、私たちが知るサイズとは矛盾するように描くことで、小さいものが遠くへ後退して見えるように計算されています。
マイケル・クレイグ=マーティン《知ること》1996 アクリル,カンヴァス テート美術館蔵
メトロノームや地球儀が「大きく」カンヴァスの「下」に、はしごや椅子が「小さく」カンヴァスの「上」に描かれています。
作者がただ無作為にモチーフを大小いろいろなサイズで描いただけなのかもしれないのに、私たちは勝手に、メトロノームや地球儀が手前に、はしごや椅子が遠くにあるという、遠近感のある空間が広がっているように知覚してしまう。
頭でわかっていてもそう見えちゃうって不思議ですね。
なんだかだまされたような感じがして、やられたなあと思いました。
お気に入りの作品
ジム・ランビー《スカは死んでいない》が好きでした。
ピンク色のラメが塗られたレコードデッキ、下にはグローブとビーズがつるされています。
ジム・ランビー《スカは死んでいない》2001 テート美術館蔵
作者のランビーは学生時代にロックスターを目指していたそうで、音楽は身近な存在であり素材や作品の題材でした。
タイトルにある「スカ」というのはジャマイカのポピュラー・ダンス・ミュージックのことで、1970年代後半から80年代初頭に英国で社会的ブームとなったパンクロックミュージックに強く影響を与えていた音楽です。

ランビーは、CDプレイヤーが普及して廃れていったレコードデッキを用い、時代遅れのキッチュな配色にすることによって、「スカ」の時代が過ぎ去ったものであることを表現したのだそうです。

このレコードはキラキラしながら実際に回っていて、グローブの下に輝くビーズもカラフルで綺麗でした。
廃れてしまったことを表すなら、レコードは止まっていそうなもので、全体的な配色も灰色とかくすんだ色でも良かったはず。
あえて煌めきを残し、「死んでいない」というタイトルに決めたのは、作者の音楽を愛する心があったからなのかなと勝手な妄想をしたりしました。
「YBA&BEYOND展」、たまには現代アートも楽しいですね。
大昔の絵画を見る時は、歴史を学ぶ、半分フィクションの物語を読むような感覚で楽しんでいるのですが、現代アートは自分と時代が近い分、心に来るものが多いです。
とくに今回は1990年代という、自分が生まれた年代がテーマだったのも感慨深かったです。
行ってよかったです!
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「YBA&BEYOND 世界を変えた90s 英国アート」情報
グッズ

YBA&BEYOND展ではポストカードを4枚、購入しました。
ほかにもステッカー、ボールペン、マグネット、キーホルダー、PCバッグ、マグカップ、スウェットなどなど豊富なラインナップで、どれもカッコよかったです。
今回はかなり自重して控えめな買い物になりましたが、リングノートは買えばよかったかな、、、。
特設ショップは展示会場の「中」にありますのでお財布を持って鑑賞してください。
ショップのみの利用や再入場はできません。
混雑状況
2月中旬、平日の昼に行きました。
そんなに混んでいなくて、かなりゆったりと鑑賞できました。
チケット
チケットは 一般 2,300円 (税込) です。
オンライン、当日窓口、どちらも利用できます。
私はオンラインで前売チケットを買いましたが、窓口も混んでいませんでした。
所要時間
所要時間は1時間半~2時間程度です。
私はすべての解説にざっと目を通しながら、音声ガイドを聴きつつ各フロア2周くらいして2時間かかりました。
60分超えの映像作品もありますし、すべてをフルで制覇したい場合はもっと時間がかかります。
映像作品について
本展ではいくつか映像作品が上映されています。
出入り口が黒い布で区切られていて、布をめくると映像が流れている部屋に入ることができます。
私は初め、周りが暗すぎて出入口だと認識できなかったせいで、入場方法が分からずうろうろしちゃいました。
係員さんはいないようで、おそらくは上映中でも出入り自由だと思われます。
周りの方も、各々のタイミングで出入りしていました。
《ハンズワースの歌》という映像作品については60分超えです。
上映時間も決まっているので、最初から最後まですべて観たい方はご参考にしてください(※2月中旬現在の情報です)。

ロッカー
国立新美術館ではロッカーを利用できます。
ロッカーは無料の鍵式で 100円玉が必要です。
音声ガイド

本展のアンバサダーは 細野晴臣さんと齋藤飛鳥さんです
今回、会場での音声ガイド機の貸し出しやスマホアプリでの視聴とはまた違った形式なのでご注意ください。
● 購入手順
- 会場入り口で購入 650円(PayPay等のスマホ決済も可能)
- 係員さんが示す二次元コードをスマホで読み込む
- 読み込んだ先のサイト内で音声ガイドを視聴
● 注意事項
- スマホ必須
- イヤホン必須
- バッテリー残量に注意(結構減りました)
- データ通信残量に注意(利用中の通信費は自己負担)
- 利用可能時間を過ぎると視聴できなくなる(正確な時間は不明、画像は1日経過後)
今回のように、会期中であれば家で何度も聴き直せる仕様でないのなら、スマホで音声ガイドを聴くメリットってないな、と個人的には思ってしまいました。
撮影OKの展示だったので、スマホで音声ガイドと写真撮影をダブルで行う必要があってかなり面倒だし、スマホのバッテリーも結構減ります。
運営側には会場で音声ガイド機を貸し出す手間が省けるメリットがあるのでしょうが、利用側としては不便な気がします。
撮影スポット
本展では映像作品を除き、ほとんどの作品が撮影OKです。
巡回
YBA&BEYOND展は 東京→ 京都 と巡回予定です。
● 国立新美術館
2026年2月11日(水・祝)~5月11日(月)
● 京都市京セラ美術館
2026年6月3日(水)~9月6日(日)予定
展覧会情報まとめ
お出かけ前に美術館公式サイトをご確認ください。
以下はすべて東京展の情報です。
| 展覧会名 |
テート美術館 |
| ● 東京会場 |
2026年2月11日(水・祝)~5月11日(月) |
| 開室時間 |
10:00-18:00 |
| 休館日 |
毎週火曜日 |
| 混雑状況 | 2月中旬平日の昼頃 混雑なし |
| 所要時間 | 1時間半~2時間程度 |
| チケット | 一般 2,300円 |
| ロッカー | 無料/100円玉必要 |
| 音声ガイド | あり |
| 撮影 スポット |
あり 多くの展示作品が撮影可 |
| グッズ |
展示会場の「中」にある特設ショップにて |
| 巡回 |
● 京都市京セラ美術館 |
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関連情報
●「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」
東京都美術館で 2026年4月12日(日) まで開催中。
室内画、家族の絵、幻想的でちょっとファンタジーな自然風景が好きなら絶対に楽しめる展覧会になっています。
暖かい日常を描いた作品が特に良かったです。

●「クリスチャン・ボルタンスキー -Lifetime」(2019年)
現代アートだと、2019年に行ったこの展覧会が印象深いです。
没入感があって、地図を片手にお化け屋敷に入っているようなドキドキ感がありました。
生と死の狭間に来たような空間でしたね。

●「塩田千春展:魂がふるえる」(2019年)
天井から吊るされた展示を観たら、塩田千春さんの作品を思い出しました。
この展示もすごかったんですよね、日本人の女性ということでやっぱり共鳴する部分もあり、結構衝撃的だったのを覚えています。

●「大竹伸朗展」(2022年)
物体をたくさん集めたような展示では大竹伸朗展も。
「音楽」についてのアートもあって、アーティストごとに個性のある表現方法がおもしろいです。

▼ 2020年から現在まで、観に行った美術展の感想はこちらにまとめています

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最後まで読んでいただきありがとうございました。
美術展や読書記録の X もやっているので、よければ遊びに来ていただけると嬉しいです。

( ・ω・ )/ bye bye♪
