『ハマスホイとデンマーク絵画』展に行ってきました。
東京展は残念ながらすこし早めに終わってしまいましたが、次は山口県に巡回しますね。
すごくステキな展覧会だったので、記事にしたいと思います。
デンマークはアンデルセンの故郷として有名な北欧の国です。首都であるコペンハーゲンの街並みは、王室の宮殿やカラフルなニューハウン港など物語のなかにいるような美しさ。
国連の「世界幸福度ランキング」では何度も1位に選ばれる「幸福の国」としても知られています。
デンマークには、
くつろいだ・心地よい雰囲気という意味の
"ヒュゲ(hygge)"という価値観が息づいています。
この展覧会では、そんな幸福の国デンマークにふさわしい、
日常の何気ない風景や安らぎを大切にしたすばらしい絵画の数々を観ることができした。
『ハマスホイとデンマーク絵画』|感想・混雑・グッズなど
みどころ1|ありふれた日常を描く「市民の芸術」
1754年に美術アカデミーが創設されたデンマークは、1800年から「黄金期」とよばれます。
この時代に活躍した画家たちは、
それまでの絵画にみられる社会的地位を象徴した作品ではなく、
コペンハーゲン郊外にスケッチに出かけ、日常のありふれたシーンを主題として描きました。
クレステン・クプゲ《パン屋の傍の中庭、カステレズ》1832年頃 ニュー・カールスベア彫刻美術館
見慣れた風景が輝いてみえるような作品です。
素朴でおだやかな印象を受けます。
上の作品を描いたクレステン・クプゲは、ハマスホイが敬愛していた画家でもありました。
ヨハン・トマス・ロンビュー《シュラン島、ロズスコウの小作地》1847年 デンマーク国立美術館
このような主題は、近代のデンマーク文化の基層となり、後の画家にも受け継がれていきました。
みどころ2|漁師町スケーインの暮らし
1840年代のデンマークでは、
当時の社会情勢からナショナリズムが高まりをみせ、絵画でも「デンマーク的」な主題が選ばれるようになりました。
そんな当時、画家たちにとっての"未開の地"、半島北部の漁師町「スケーイン」が発見されます。
スケーイン独特の厳しい自然と、その中で暮らす漁師家族の労働に魅了された芸術家たちは、やがて「スケーイン派」と呼ばれるようになりました。
オルカス・ビュルク《スケーインの海に漕ぎ出すボート》1884年 スケーイン美術館
オルカス・ビュルクはスケーイン派の代表的な画家のひとりです。
上のボートを漕ぎだす漁師たちの絵画は、
実物で見ると画面がとても大きく、泡立つ激しい波が今にも押し寄せるような迫力でした。
オルカス・ビュルク《遭難信号》1883年 スケーイン美術館
また、漁師たちをささえる女性たちの絵画も。
まるでさっき写真に撮ったばかりのようなリアルさが印象的でした。
ミケール・アンガ《スケ―インの北の野原で花を摘む少女と子供たち》1887年 スケーイン美術館
みどころ3|「室内画」でみるあたたかな生活
1880年代のコペンハーゲンでは、画家の自宅室内を描いた作品が人気になりました。
あたたかな家族団らんシーンなど、「親密さ」がデンマーク絵画の特徴の一つとなりました。
ヴィゴ・ピーダスン《今に射す陽光、画家の妻と子》1888年 デンマーク国立美術館
わたしは《コーヒーを飲みながら》という作品がとても好きでした。
女性たちのくつろいだ雰囲気や、
会話がとぎれてふと窓の外なのか、ふとを視線をなげるシーンは、
おばあちゃんを思い出すような安心感をおぼえます。
ヴィゴ・ヨハンスン《コーヒーを飲みながら》1884年 リーベ美術館
展示室でいちばん目立っていたのは《きよしこの夜》でした。
絵からツリーの光がこぼれ出ているように光ってみえて、すごくすごく美しかった・・・!
ヴィゴ・ヨハンスン《きよしこの夜》1891年 ヒアシュプロング・コレクション
19世紀のデンマーク絵画を代表する作品の一つで、
冒頭でご紹介した"ヒュゲ"のあたたかなイメージとしてデンマークの方たちに親しまれているそうです。
制作当初は買い手がつかなかったというから不思議です。
みどころ4|「ハマスホイ」が灰色世界に描いたもの
1885年に画家としてデビューしたハマスホイの灰色の世界観は独特で、はじめ批評家や鑑賞者には挑発的に映ったそうです。
ヴィルヘルム・ハマスホイ《画家と妻の肖像、パリ》1892年 デーヴィス・コレクション
ハマスホイは生涯をとおして風景画や肖像画を描きましたが、
高く評価されたのは1890年代半ばから描き始めた室内画でした。
ヴィルヘルム・ハマスホイ《寝室》1896年 ユーテボリ美術館
ハマスホイの絵画にはたびたび彼の妻イーダと、
常日頃から使っていたとおもわれる家具や置物などの品が丁寧に描かれています。
ヴィルヘルム・ハマスホイ《室内ー陽光習作、ストランゲーゼ30番地》1906年 デーヴィス・コレクション
ハマスホイの描く灰色の世界は、
色彩が少ない中にも どこか あたたかみ と 無常なはかなさ を感じさせます。
ヴィルヘルム・ハマスホイ《室内ー陽光習作、ストランゲーゼ30番地》1906年 デーヴィス・コレクション
彼が大切にしていた人や空間を、
彼だけが描ける灰色に閉じ込めているようにも思えました。
展覧会情報
展覧会名称 | ハマスホイとデンマーク絵画展 |
公式サイト | 特設ページ / Twitter |
会場 | 東京都美術館/山口県立美術館 |
会期 |
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所要時間 | 1時間半~2時間 |
混雑状況 |
東京展に休日に行きましたがそれほど混雑していませんでした。新型コロナの影響もあると思います。 |
音声ガイド | 宮沢りえ さん |
グッズ |
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撮影スポット |
展示の最後にありました。 |
関連書籍
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