国立新美術館の『マティス 自由なフォルム』 展に行ってきました。
マティスのなかでも"切り紙絵"に焦点をあてた約160点の作品が集まる展覧会です。
本展にあわせて修復された横 8メートル超えの切り紙絵の大作《花と果実》が観られます。
さらに、マティスが最晩年に手掛けた集大成「ヴァンス・ロザリオ礼拝堂」を原寸大で再現したセクションもあります!
『マティス 自由なフォルム』 感想
2023年の『マティス展』を観たばかりでも楽しめる?
マティス展といえば 2023年に東京都美術館で開催された『マティス展』を観に行ったばかりなので、今回の展覧会は行こうかどうしようかちょっと考えました。
でも、見終えた今となってはやはり「行ってよかったな」と感じています。
内容や作品が重なる部分はゼロではなかったです。
しかし、今回の「マティス自由なフォルム」では 2023年のマティス展で感動した「ヴァンス・ロザリオ礼拝堂」を原寸大で再現してくれていたので嬉しかったですし、サイズの大きな切り紙絵も多数あり満足感もありました。
マティス展が初めてまたは久しぶりだという方にとっては、マティスの生涯と晩年に取組んだ切り紙絵への思いについて詳しく知ることができる展覧会。
2023年のマティス展を観た方にとっては
その続きものまたはスピンオフとして楽しめる展覧会になっているかと思います。
マティスと「切り紙絵」
撮影可能エリアより撮影
アンリ・マティス(Henri Matisse/1869 – 1954)は 20世紀最大の巨匠のひとり。
「色の魔術師」と呼ばれるほどカラフルな色彩が印象的な、知る人ぞ知る超有名画家ですね。
▼マティスってどんな人?
● 19世紀から20世紀に活躍したフランス生まれの画家 |
撮影可能エリアより撮影
今回のマティス自由なフォルム展ではとくに「切り紙絵」に焦点が当てられた展覧会になります。
マティスにとって習作の手段のひとつだった「切り紙絵」は、晩年に大病を患って以降、新たな表現手法として精力的に取り組むジャンルとなりました。
既存の色紙ではなくマティス自身がアシスタントに指示を出して彩色した紙を使って制作していく切り紙絵において、マティスは自身の創作活動でずっと取り組んできた「色彩」の探求をよりいっそう深めていったのだそうです。
マティスの《花と果実》
アンリ・マティス《花と果実》1952-1953年 切り紙絵、ニース市マティス美術館蔵
1952年頃、マティスはとあるアメリカ人コレクターの中庭に飾る大型装飾の注文を受けました。
制作された大型装飾は全部で4点あり、《花と果実》はそのうちの一つです。
5枚のカンヴァスを繋げて作られていて、サイズが 410 × 870 cm の巨大な切り紙絵の作品となっています。
真横に立つとかなりの横長かつ見上げるような高さで、結構な迫力がありました。
鮮やかな花が並んでいますが、その配置は規則的なようにも見えるしバラバラのようにも見える。
左右には縦長の青い柱のようなものもあります。
建物(中庭)に飾られることを想定しての、この柱のデザインなのかもしれません。
中庭にこのような作品が4枚並んでいると思うとかなり人目を惹くものになっているでしょうね。
カラフルで明るい気持ちになる作品です。
マティスの《ブルー・ヌード》
アンリ・マティス《ブルー・ヌード IV》1952年 切り紙絵、オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託)
〈ブルー・ヌード〉はマティスの切り絵の代表例ともいえる作品です。
全部で4点ある連作で、4つとも青色でポージングもほぼ同じの裸婦がモチーフになっています。
この《ブルー・ヌードⅣ》はシリーズのうち最も青い切り紙の重なりが多い作品とのことです。
アンリ・マティス《葦の中の浴女》1952年 切り紙絵、オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託)
次の《葦の中の浴女》も〈ブルー・ヌード〉シリーズと共通点が多いですね。
〈ブルー・ヌード〉も《葦の中の浴女》も、本展の"自由なフォルム"という展覧会タイトルにすごくフィットする作品だと感じます。
簡易なシルエットのみで詳細が分からないし、青一色というのも独特。
綿密に陰やら遠近やらをドローイングすることよりも、色や形のほうに重点を置いているように思います。
探求の果て- ロザリオ礼拝堂
マティスが"私の人生をかけた仕事の到達点"であり"運命によって選ばれた仕事"だと評したのが、1948年から4年にわたって携わったヴァンスのロザリオ礼拝堂の建設でした。
マティスが内装から装飾、典礼用の衣装デザインなどあらゆるものをプロデュースした礼拝堂です。
2023年のマティス展ではこのロザリオ礼拝堂の内部の4K映像が観られてそれはそれでとても感動したのですが、今回のマティス自由なフォルム展ではそれが原寸大で再現されているんです。
青と黄色のステンドグラスから入る光、大判サイズの壁画など本物を見ているかのような没入感でとても美しい空間でした。
同じフロアには、ステンドグラスの習作や壁画の習作、神父さんが着る上祭服のマケット(雛形)などの展示もあります。
ヴァンス礼拝堂の完成に至るまで、マティスが自分の人生の集大成として尽力していたことが伺えました。
アンリ・マティス《ステンドグラス、「生命の木」のための習作》1950年 ニース市マティス美術館蔵
上祭服のマケットは画像(↓)にある薔薇色のもの以外にも 白・緑・黒・紫など色違いで6種類あり、典礼歴によって意味が異なるそうです。
一つ一つ模様が違っていて見ていてとてもおもしろいです。
この不思議な模様は 海藻類のフォルムから着想されたのだそうです。
アンリ・マティス《薔薇色のカズラ(上祭服)のためのマケット》他 1950-52年 ニース市マティス美術館蔵
神父さんが着る服って黒一色のシンプルなイメージなので、マティスがデザインしたカラフルで個性的な服を着れば 礼拝堂が一気に未知なる神秘的な別世界になりそうです。
撮影可能エリアより撮影
マティスはこの礼拝堂を
"神を信じているかにかかわらず、精神が高まり、考えがはっきりし、気持ちそのものが軽くなるような場"にしたいと考えていたそうです。
ステンドグラスに照らされた美しく優しい澄んだ空気感はまさにそんな感じ。
マティスが目指した"気持ちが軽くなる空間"は確かにしっかりと実現されたのだなと思いました。
お気に入りの2枚
アンリ・マティス《ロカイユ様式の肘掛け椅子》1946年 油彩/カンヴァス ニース市マティス美術館蔵
マティス自由なフォルム展は切り紙絵がメインではありますが、油彩画の展示もすこしだけあります。
なかでも気に入ったのが《ロカイユ様式の肘掛け椅子》です。
平面的で色も単純にパキっと分かれているところは切り紙絵と似たものがあります。
くねくねした自由な形が可愛らしくて好きになりました。
アンリ・マティス《黒色のカズラ(上祭服)のためのマケット》他 1950-52年 ニース市マティス美術館蔵
また、上祭服のマケットはどの色も良かったですがやはり黒色のデザインがいちばん好きでした。
カラフルなものもいいけど、この黒色は強くて格好良いですね。
模様も素敵です。
マティス自由なフォルム展。
私にとっては 2023年のマティス展の"続きもの"としてすごく楽しめました。
いつかまたフランスに行ったら、ロザリオ礼拝堂に行ってみたいです。
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『 マティス 自由なフォルム』の情報
グッズ
マティス自由なフォルム展 のグッズ売り場は、定番のポストカードや文具以外にもトートバッグや雑貨、Tシャツなどかなり充実したラインナップになっています。
グッズ売り場は展示会場の中にありますので、鑑賞時にお財布を持ってお入りください。
ポストカード
ポストカードはたくさん種類がありました。
気に入った作品がひとつは採用されているのではないかと思います。
カードのサイズは作品に合わせていくつか用意されています。
ポストカードは定番サイズが 1枚 165円(税込)
大判サイズが 1枚 275円(税込)でした。
ブックマーカー(しおり)
ブックマーカーは2種類を購入しました。
ステンレス製(?)のものはゴールドはよく見かけますがシルバーは案外珍しいのではないでしょうか。
《ジャス》シリーズの切り紙絵の作品がモチーフでとても可愛いです。
プラスチック製のほうは透け感がないタイプで、表と裏で画像のようなデザインになっています。
ブックマーカーは ステンレス製が 1,100円(税込)
プラスチック製は 440円(税込)でした。
400円ガチャ(缶バッジ)
グッズ売り場の出口付近に 400円玉ガチャがあったのでやってみました。
私は顔シリーズの缶バッジを選びました。
ガチャガチャは全部で3種類あります。
全制覇しようとしている方を見かけましたので、意外と混雑ポイントかもしれません。
両替機がありましたので小銭が無くても大丈夫です。
混雑状況・所要時間
平日の14時くらいだとそこまで混雑を感じませんでした。
入場時も並ばずに入れましたし、会場が広いので密着する感じは一切ありません。
狭いエリアに人が溜まることは多少あったかな、というくらいです。
所要時間は 1時間半程度です。
チケット
マティス自由なフォルム展 のチケットは当日券・ネットチケットどちらもあります。
私は当日にチケットカウンターで購入してみましたが、待ち時間ほぼゼロで購入できました。
チケットカウンターで購入すると絵柄のチケットがもらえますよ。
ネットチケットのほうは日時指定ができるわけではありませんので注意です。
チケットは 一般料金 2,200円 です。
音声ガイド
マティス自由なフォルム展の音声ガイドは、俳優の安藤サクラさんが担当です。
当日貸出価格は 650円(税込)
アプリでの事前ダウンロード版は 700円(税込)で、アプリ版は 5月27日(月)まで何度でも聴くことが可能です、
ロッカー
国立新美術館ではロッカーを利用できます。
ロッカーの使用は無料ですが、100円玉が必要です。
撮影スポット
マティス自由なフォルム展は、会場内の指定フロアとヴァンス礼拝堂エリアが撮影可能です。
ビックサイズの作品や彫刻なども撮影できます。
コラボメニュー
国立新美術館1Fの軽食スペースでは、マティス自由なフォルム展とコラボした特別ドリンクがいただけます。
私はお昼も食べたかったのでサンドイッチと一緒に購入。
お味は普通に美味しい飲むヨーグルトという感じ。
アロエ・ナタデココ・紫色のラベンダーエキス(?)が入っていて、ラベンダーの風味が特徴ですね。
企画展特別ドリンクは 880円(税込)です。
正直、割高だとは思いますが、こういうものは記念なので・・・。
上階のレストランでもタイアップメニューがありますので、クオリティ重視ならそちらの方がいいかもしれないですね。
巡回
『マティス 自由なフォルム展』は東京のみで、巡回はありません。
開催概要まとめ
展覧会名 | マティス 自由なフォルム |
特設サイト | https://matisse2024.jp/ |
● 東京展 |
2024年2月14日(水)~5月27日(月) |
休室日 | 毎週火曜日※ただし4月30日(火)は開館 |
開室時間 | 10:00 ~ 18:00 ※毎週金・土曜日、4月28日(日)、5月5日(日)は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで |
混雑状況 | 平日14時くらい・混雑なし |
所要時間 | 1時間半程度 |
チケット | 一般 2,200円・日時指定なし |
ロッカー | あり(無料・100円玉必要) |
音声ガイド | あり |
撮影 | 会場内撮影可能エリアあり |
グッズ | 展示会場内にあり・充実 |
※お出掛け前に美術館公式サイトをご確認ください
※開催地に指定がないものはすべて東京展の情報です
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関連情報
● 『モネ 連作の情景』
2024年5月6日(月・休)まで大阪で開催中です。
モネの連作に焦点を当てた展覧会で、印象派ならではの光や空気の移ろいを感じられる素敵な展覧会でした。
● 『印象派 モネからアメリカへ』
2025年1月5日(日)まで、東京→福岡→東京→大阪と巡回中。
印象派の波はヨーロッパだけでなく、海を越えたアメリカにも影響を与えていました。
アメリカらしい特徴を描いたアメリカ的な印象派作品にたくさん出会えます。
● 『大吉原展』
5月19日(日)まで東京藝術大学大学美術館で開催中。
圧倒的な作品量と情報量で吉原の解明度が上がります。
負の面もそうでない面も、吉原の全体像がよく分かるとても濃厚な展覧会でした。
●『北欧の神秘』
2025年3月26日(水)まで「東京 → 長野 → 滋賀 → 静岡」 と1年をかけて全国を巡回中。
すーっごい素敵な展覧会でした。
北欧の風景というだけでもキラキラして聞こえるのに、絵画表現がとてもドラマチックだったりファンタジーだったりで観ているだけで楽しかったです。
●『マティス展』(2023)
2023年に東京都美術館でやっていたマティス展がこちらです。
がっつりマティス展を観たのが初めてだったので、こちらのほうがテンション高めに感想を書いているかなと思います。
これまでの美術展の感想はこちらにまとまっています。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
美術展や読書記録のTwitterもやっているので、よければ遊びに来ていただけると嬉しいです。
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