国立新美術館の
「メトロポリタン美術館展 ― 西洋絵画の500年」に行ってきました。
ルネサンスから19世紀まで、500年の西洋絵画の歴史を網羅した展覧会です。
ラファエロ、ティツィアーノ、エル・グレコ、カラバッジョ、フェルメール、レンブラント、ターナー、ルノアール、ドガ、セザンヌ、ゴッホ、モネ ……
数えきれないほどの、超有名な巨匠たちの作品が集められています。
「メトロポリタン美術館展」 見どころ
全体の感想
本展は、メトロポリタン美術館の"常設展ギャラリー"に展示された作品が並ぶ展覧会です。
改修工事を機に実現した企画だそうで、さすが有名美術館の常設展だけあって誰もが知っている巨匠が勢ぞろいした華やかな展覧会です。
大判作品もたくさんあるうえ、
本でしか知らなかった、一目見てみたかった画家の作品も観ることができます。
日本初公開作品も数多く、鑑賞後は充足感でいっぱいの楽しい展覧会でした。
メトロポリタン美術館 外観
ちなみに「メトロポリタン美術館」は、アメリカ・ニューヨーク市マンハッタン、セントラル・パーク内の一角にある、世界最大級の美術館です。
先史時代から現代まで、世界各国から150万点余りの古遺物や美術品を有していて、そのうちヨーロッパ絵画のコレクションは、13世紀から20世紀初頭まで2500点以上を所蔵しています。
時代別、一度は観てみたかった名画
本展では、美術史を時代ごとに3つの時期に分類して展示されていて、西洋絵画の変遷を順々に辿っていけるような構成になっています。
Ⅰ. 信仰とルネサンス
Ⅱ. 絶対主義と啓蒙主義の時代
Ⅲ. 革命と人々のための芸術
まず、一つ目のセクションは
古代ギリシア・ローマ美術の"再生(ルネサンス)”をめざした ルネサンス期の展示です。
このセクションでは、クラーナハ(父) の《パリスの審判》が印象的でした。
ルネサンス期の特徴である遠近法や
人間を平面ではなく立体的に描く、といった特徴がわかりやすく表れていると思います。
ルカス・クラーナハ(父) 《パリスの審判》1528年 油彩/板 メトロポリタン美術館蔵
そもそも「パリスの審判」という神話自体が大変おもしろいですからね…。
ルーベンスをはじめ、いろいろな画家が「パリスの審判」の主題を描いています。
女性を多方向から描けるというのも、人気の理由の一つだったとか。
すべての神々が招かれるはずの結婚式に招待されなかった争いの女神エリス。
怒ったエリスは"一番美しい女神へ"と宛てた手紙と共に黄金のリンゴを宴に届けた。
「神々の女王」「知恵の女神」「愛と美の女神」の三美神はそれぞれ「黄金のリンゴは自分のものだ」と主張。
ゼウスがこの面倒な判断をトロイア王の息子パリスに任せると、女神たちは様々な賄賂によってパリスを買収しようと画策する…(ちなみに、選ばれるのは中央の女神です)
2つ目のセクションは「絶対主義と啓蒙主義の時代」。
華やかな王宮のイメージといえば、フランス・ブルボン王朝、ベルサイユのばらの世界がまっさきに思い浮かびます。
展示会場でただただひときわ美しかったのが、フランソワ・ブーシェの《ヴィーナスの化粧》でした。
フランソワ・ブーシェ《ヴィーナスの化粧》1751年 油彩/カンヴァス メトロポリタン美術館蔵
ブーシェは、ルイ15世の妾・ポンパドゥール夫人のお気に入り画家で、後に国王付き首席画家にまで上り詰めた、ロココ美術を代表する画家のひとりです。
ソフトフォーカスを掛けたような柔らかい描き方で、明るい光に照らされた真珠の肌とバラ色の頬、やわらかそうなブロンドの髪。
細部まで繊細に描かれたモチーフ。
この《ヴィーナスの化粧》はポンパドゥール夫人のために建てられた城内の浴室を飾っていたそうです。
宮廷のお姫様にぴったりのロマンチックで華やかで美しすぎる作品でした。
1789年のフランス革命を契機に
19世紀はヨーロッパ各地で近代化が進んだ激動の時代となりました。
絵画の世界でも、アカデミーが提唱する絵画から逸脱し、戸外に繰り出して身近な風景をありのままに描くレアリスムが誕生。
のちの印象派絵画へと変遷していきます。
オーギュスト・ルノワール《ヒナギクを持つ少女》1889年 油彩/カンヴァス メトロポリタン美術館蔵
特に好きだったのは、ルノワールの《ヒナギクを持つ少女》と ドガの《踊り子たちと、ピンクと緑》です。
印象派ならではの多種多様な色づかいと、しゅわしゅわ~とやわらかくぼやけた輪郭の女性たちの絵がとても魅力的でした。
エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》1890年 油彩/カンヴァス メトロポリタン美術館蔵
ルネサンス期とくらべてるとずいぶん画面の印象画変わっています。
歴史の流れと絵画史の変化を肌で感じられる、大変興味深い体験だったと思います。
"女占い師"のテーマ
「メトロポリタン美術館展」のメイン作品としてポスターにもなっている、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの《女占い師》もすっごく良かったです。
青年に群がり占いで気を引きつけながらスリをする女性たちを描いていますが、中央女性の何とも言えない顔つきが癖になります。
民族衣装のような服装や明るい色合いが、場面とちぐはぐでおもしろいなと思いました。
101.9 x 123.5 cm と結構大きな作品で、とても目を引く魅力があります。
ジョルジュ・ラ・トゥール《女占い師》おそらく1630年代 油彩/カンヴァス メトロポリタン美術館蔵
作者のジョルジュ・ラ・トゥールは、フランスのルイ13世の国王付画家でしたが、次第に忘れられ、20世紀初頭に「再発見」された画家だそうです。
残された作品は少なくあまり詳しいことはわかっていませんが、カラバッジョの影響を受けたといわれており、本展でもカラバッジョの作品と並べて展示されていました。
このジョルジュ・ラ・トゥールは、中野京子さんの著書『怖い絵』シリーズ第1作目の表紙に使われていた画家だったので、一度見てみたかったんですよね…!
ジョルジュ・ラ・トゥール《ダイヤのエースを持ついかさま師》1636年頃 ルーブル美術館蔵
※本展にはありません
色や陰影も独特で、平面のような立体のよう微妙なラインがまた作中の物語を引き立てている気がします。
展覧会のメインを張るだけのある、魅惑的なパワーを持った作品でした。
風俗画家・フェルメールの《信仰の寓意》
同時期に開催していた「フェルメール展」にも足を運んでいたので、今回の「メトロポリタン美術館展」のほうで展示されたフェルメールもまた、とても気になっていました。
本展では、風俗画家・フェルメール作品としては大変珍しい"寓意画"が展示されました。
現存作品をくらべても、寓意画はこれが唯一だそうです。
ヨハネス・フェルメール《信仰の寓意》1670-72年頃 油彩/カンヴァス メトロポリタン美術館蔵
プロテスタント国家オランダ出身のフェルメールですが、結婚を機にカトリックに改宗したとされています。
《信仰の寓意》というタイトル通り、キリストの磔刑を背景に、胸に手を当てる女性=信仰、地球儀を踏む=カトリック教会による支配、リンゴ=原理……など、様々な意味が込められているようです。
青と黄色の組み合わせ、暗い部屋に左から光が入る構図はフェルメールらしいですが、《牛乳を注ぐ女》や《窓辺で手紙を読む女》にみられる静かで切なげな雰囲気は感じられず、確かに異例の作品だなと思いました。
お気に入りの作品2つ
振り返ってみると、私には人物画、特に女性がメインの作品がおおく心に残っているようです。
時代や画家によって作風が異なっていても、魅力的で引力を感じるような作品がたくさんありました。
本展で特に好きだったのはこの2つです。
グイド・カニャッチ《クレオパトラの死》1645-55年頃 油彩/カンヴァス メトロポリタン美術館蔵
グイド・カニャッチの《クレオパトラの死》。
美の女王であるクレオパトラが、敗戦と愛人の死を受けて自らを毒蛇を噛ませて自害する場面は、ドラマチックで絵に映える場面だとか、女性のヌードを公然と描けるだとかの理由で多くの画家に選ばれる人気のテーマです。
私は女ですが、それでも魅入ってしまう美しさと危うさが好きでした。
男性の人物画からも一つ。
ジャン・シメオン・シャルダンの《シャボン玉》もとても良かったです。
ジャン・シメオン・シャルダン《シャボン玉》1733-34年頃 油彩/カンヴァス メトロポリタン美術館蔵
絶対王政時代の絵画ですが、なんだか素朴で可愛らしいです。
全体的に暗い色合いではありますが、シャボン玉の虹色の反射は繊細に描かれていて、顔を近づけて観察したりしました。
後ろにひょっこり顔を出す男の子もふくめ、とっても微笑ましい作品です。
「メトロポリタン美術館展 ― 西洋絵画の500年」…―
大満足です。
「メトロポリタン美術館展」 グッズ
グッズはかなり充実していて、いつもどおりたくさん買ってしまいました。
雑貨からお菓子まで盛りだくさんとなっています。
ポストカード
ポストカードは種類がたくさんあって
ポストカードになっていてほしな、という作品はすべてそろっていたように思います。
印刷もきれいで、たくさん買ってきました。
値段は各165円(税込)です。
ブックマーカー(しおり)
ブックマーカー(しおり)は、
「クリアしおり」と「ステンレス製しおり」がありました。
「クリアしおり」は気軽に使えて、美術館のグッズのなかではやさしいお値段なので大好きです。
この透ける感じも可愛い…。
いつもは華とか風景画の綺麗めな作品のしおりを選ぶのですが、今回は本展でインパクトを受けた2作品*を選びました。
見るたびに「おぉっ!」となるインパクトがある気がしています。
*ジョルジュ・ラ・トゥール《女占い師》
*マリー・ドニーズ・ヴィレール《マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没)》
「ステンレス製しおり」のほうはモネの青い《睡蓮》を選びました。
作品自体がすごくキレイで、何かしらのグッズがあれば嬉しいなと思っていたので嬉しいです。
ステンレス製のしおりはちょっと高貴な気分で読書ができますね。
「クリアしおり」は 各種 385円(税込)
「ステンレス製しおり」は 各種 1,100円(税込)です。
3Dノート&タッチペン「踊り子」
ドガの踊り子の絵画《エトワール》。
本展には展示はありませんが大好きな作品なので、ノートとペンのセットを買いました。
ノートの方は表紙が3Dになっています。
ペンはキャップと本体がゴムでつながっていて、ノートを閉じた後のバンドとしても使えます。
ペン先とお尻はタッチペンにもなる仕様です。
「3Dノート&タッチペン」は 748円(税込)でした。
お菓子
お菓子もすごく良かったです。
どれもお土産にもらったら嬉しいと思います。
チョコレートは、外のケースも中のチョコレートもデザインが抜群に好きでした。
ケースは数種類あり、私はセザンヌの《リンゴと洋ナシのある静物》を選びました。
ケース自体もスライド式でしっかりした作りになっています。
チョコレートはいわゆるマーブルチョコレートです。
メトロポリタン美術館のロゴがおしゃれでステキでした。
920円(税込)です。
ニューヨークで人気のブラウニー店「ファットウィッチベーカリー」と美術展のコラボです。
日本にも出店しているお店で、すごく美味しかったです。
お値段は 1,620円(税込)とちょっと贅沢かな、と思いましたが、箱も中身も可愛くて後悔はありません。
ニューヨークキャラメルサンドは安定のおいしさ。
箱が本みたいな見た目でかわいいのと、こんな機会がなければ滅多に買わないので購入しました。
4枚入りで、810円(税込)です。
THEMET ロゴ入りステンレスボトル
保冷・保温対応の魔法瓶。
美術館のロゴとモノトーンの色がかっこよかったです。
頭にストラップがついているのも可愛くてお気に入りになりました。
口が広いので氷が入れやすくて助かっています。
ストラップは取り外しはできないようなので洗うときにすこし面倒ではありますが、使うたびに気持ちが上がるのであまり気になりません。
ステンレスボトルは 5,940円(税込)です。
デイリーバッグ(青)
デイリーバッグ、今回のグッズの中でいちばん気に入りました。
深い青色に、白字でメトロポリタン美術館のロゴが入っています。
口のところにゴムがついていて、くるくる小さく折りたためるところも便利です。
スーパーで使う買い物用のマイバッグのようなシャカシャカしたタイプではなくて、生地が布地(ポリエステル100%)なところもまたいいなと思いました。
デイリーバッグは 1,430円(税込)です。
色は青と赤がありました。
「メトロポリタン美術館展」 その他情報
チケット
私は4月下旬の平日午前中に行きました。
事前予約せずに行ってしまったのですが、しっかり入ることができました。
チケットは美術館外のチケット売り場ではなく、館内で販売しています。
時間は30分ごとに区切っているようで、例えば10時05分に着いた場合の入場時間は10時30分になります。
もちろん、混雑具合によってはもっと待たなければならないため、基本的には事前予約していくことをお勧めします。
とくに混雑しがちな会期終了間際は、絶対に事前予約していった方がいいと思います。
混雑状況・所要時間
入場時間になると、展示会場前に長蛇の列ができていてびっくりしました。
(きちんとテープで区切り整備してくれています。)
しかし、会場にはいるとその列を感じさせないスペースが確保されていて、展示会場って広いんだなと改めて実感。
多少は並んで順番に鑑賞する場面もありましたが、不自由なくゆったり鑑賞できました。
所要時間は1時間半くらいでした。
音声ガイド
ナビゲーターは 俳優・佐々木蔵之介さんです。
メトロポリタン美術館展のように、
一つの画家や時代を深堀するのではなく時代を広く扱うような展覧会では、音声ガイドの利用はとくにおすすめです。
絵から得られる情報の濃度が大きく異なるので、鑑賞後の満足感がすごく違ってくる気がしています。
音声ガイドは、600円(税込)です。
巡回
「メトロポリタン美術館展」は昨年11月に大阪で開幕、その後、この東京展に巡回してきました。
東京展は 5月30日(月)までです。
くわしくは次の開催概要をご覧ください。
展覧会開催概要
展覧会名 | メトロポリタン美術館展 -西洋絵画の500年 |
●大阪展(終) | 大阪市立美術館 2021年11月13日(土)〜2022年1月16日(日) |
●東京展 | 国立新美術館 2022年2月9日(水)〜5月30日(月) ▶ 東京展 特設サイト ▶ Twitter:@TheMet_exhn |
混雑状況 | 東京展では程よく混んでいました |
所要時間 | 1時間半 |
音声ガイド | 600円(税込) 俳優・佐々木蔵之介さん |
撮影スポット | 東京展では無し |
グッズ | すごく充実 |
※お出掛け前に美術館公式サイトをご確認ください
おまけ : 国立新美術館とツツジ
4月の下旬に観に行ったのですがツツジが満開でした。
春ですね…。
展覧会の後、いい気分にひたって散歩するの、大好きです。
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▼メトロポリタン美術館の公式サイトはこちら
▼「メトロポリタン美術館展」と「フェルメール展」とで、2022年はフェルメール作品を2つも観ることができました。現存作品が少ないことでも有名なフェルメールなので、生きている間にどれだけみられるでしょうか…。
▼「メトロポリタン美術館展」のように西洋美術を一望できる美術展といえば、ここ最近では2020年の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」がありました。ロンドン展ではフェルメールの最晩年の作品《ヴァージナルの前に座る若い女性》が展示されました。
▼2019年に同じく国立新美術館で開催された「ブダペスト-ヨーロッパとハンガリーの美術400年」。この展覧会でも、女性が描かれた魅力的な作品とたくさん出会えました。
▼Twitterでは、気ままに美術や読書についてつぶやいていますのでよかったら見てください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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