ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵
KING&QUEEN展
―名画で読み解く 英国王室物語―
に行ってきました。
すっっっっっごく面白かったです!
行ってよかった。
「肖像画ばかりの展示ではつまらないんじゃないか」
「今回は観ないでスルーしてもいいかな」
そう思っていましたが、行ってよかった!!
英国王室が1000年以上にわたって背負ってきた壮大な歴史と伝統にしずかに興奮させられる展覧会でございました。
ロイヤルファミリーが今もなおメディアに注目されて民衆の関心を得ている理由が、やっとわかった気がします。
この記事では、KING&QUEEN展の感想と
展覧会をいっそう楽しくするポイントをまとめてみました。
はじめに
肖像画ばかりの展覧会はつまらない?
「渋い美術展だな。」
冒頭でも述べたとおり、
この展覧会に行く前の私は正直なところこんなふうに思っていました。
行く前に公式サイトをのぞいたのですが、展示作品はほぼ肖像画。
ルドンとかクリムトとかゴッホとか、
どちらかというとキレイでキラキラした絵が好きな私は、
「肖像画だけでは楽しくないんじゃないか」
「人をえらぶコアな展示なんじゃないか」
となめてかかっていたのですが。
めちゃくちゃ楽しかったです!!
鑑賞中はもちろんですが、
鑑賞後のいまも楽しんでいます。
鑑賞後も楽しいってどういうこと? と思いますよね。
それをお話ししたいと思います。
KING&QUEEN展 感想・楽しむコツ
#01|解説必読。人物の物語にふれろ!
まず、何より大事なこと。
KING&QUEEN展を楽しむには、絶対に作品横にある解説を読んでください。
音声ガイドも加えればなお良しです。
展示作品はほぼ肖像画しかありません。
ぽーっと眺めるだけでは30分くらいで終わってしまいますし、例えばモネの《睡蓮》のようにいつまでも眺めたくなるような類の絵ではないかもしれません。
しかし、解説を読むと変わります。
肖像画の人物が歩んだ壮絶な人生、死のいきさつを知るだけで、ただの人物画が映画のワンシーンのように格段に興味をそそるものになります。
例えばこんな感じです。
作者不詳《ヘンリー8世》17世紀か(原作:1536年)
♦ ヘンリー8世
このひと6人も妻をもったの・・・そんなにモテそうには見えないけど。
頭脳明晰スポーツ万能…ふーん。
、、、え、6人の妻のうち2人は処刑?!
離婚するために宗教分離 ?!
侍女にまで手をだしてる。時期もかぶってるから不倫か。
この女の人たちはどういう心境だったんだろう。
作者不詳《エリザベス1世(アルマダの肖像画)》1588年頃
♦ エリザベス1世
これが"国"と結婚した未婚の女王か。
衣装の細かい描写やばいな。絵としてきれい。かっこいい。
真珠は処女の象徴なのか、へえ…。
エリザベスのお母さんって実父ヘンリー8世に斬首されてるんだ、、、。
斬首されたひとの子どもでも女王になったのはなんでなの。
という具合に、
解説をよむたびに疑問がわき、肖像画をじっくり見つめたくなり、家系図をもう一度見返してしまいます。
気が付くと、
この展覧会に夢中になっている自分がいました。
#02|現代まで脈々とつづくロイヤル一族を実感しろ!
展示構成がじつに感慨深かったです。
構成は、肖像画がさかんに描かれるようになったテューダ―朝時代にはじまり、現代のエリザベス2世やジョージ王子、ウィリアム王子までつづきます。
テューダ―朝 | ヘンリー8世・英国国教会・エリザベス1世 |
ステュアート朝 | チャールズ1世・名誉革命・アン女王 |
ハノーヴァー朝 | ジョージ4世・産業革命 |
ヴィクトリア女王の時代 | 科学やテクノロジーの発展・世界の大国へ |
ウィンザー朝 | ジョージ6世・第1次-2次世界大戦 エリザベス2世~ |
あの有名なエリザベス1世の延長に、
王位継承戦争、宗教戦争、産業革命、世界大戦などさまざまな大変革を経ていまのロイヤルファミリーがあります。
ながいながい歴史はつながっていて、王族の血を脈々と受け継ぎながら現代にいたるという事実に鳥肌が立つ思いでした。
#03|1000年の伝統の重みを感じろ!
KING&QUEEN展を観る前までは、
ロイヤルファミリーに対して特別な感情を抱いたことはありませんでした。
テレビで報道されるニュースをみても、
「たしかに話題性はあるけどそこまで食いつくことなのかな」と。
しかし、
本展をみてなんとなく分かった気がします。
お姫様たちの出産に注目する理由も
エリザベス女王の意向に目を向ける理由も、
ヘンリー王子夫妻が王室を離脱する事の大きさも。
そりゃあ注目しますよね。
1000年以上の歴史を紡いで、これからもこの王の一族を繋いでいかなくてはなりませんから。
こんな膨大ですさまじい歴史を背負うプレッシャーは半端ではだろう。
ロイヤルファミリーに外から嫁いだキャサリン妃やメーガン妃の重圧もすさまじいに違いない。
やっぱり王室ってなにもかも特別なんだな、と感じました。
一般人からすれば、本当にドラマチックです。
#04|興味をとめるな! 映画編
そんなかんじで、
KING&QUEEN展でイギリス王室の歴史と重みをどっと吸収してきた私。
もっと知りたい。
もっと歴史を感じたい。
と思って、いま絶賛 映画鑑賞の真っ最中です。
16世紀に最強の王といわれ6人の妻を持ったヘンリー8世。
その2人目の妻が、英国国教会をつくるきっかけであり、やがてエリザベス1世の母となり、最後は反逆・姦通・近親相姦などの罪で斬首となったのブーリン家の姉 アン・ブーリンです。
しかし、王室の家系図をみるとヘンリー8世はアンの妹メアリー・ブーリンとも関係がありました。
結婚によって一族を発展させていく時代に、邪魔者が次々と消される絶対君主・姉妹の王の寵愛をめぐるやり取りや跡継ぎの男児の出産の重要性など、中世のイギリスをまざまざと見せてくれた映画です。
出産という不確実なものに苦しむ女性がいたたまれなかった。
『エリザベス:ゴールデン・エイジ』
かの有名な"ヴァージン・クイーン"エリザベス1世。
エリザベスの最大のコンプレックスは、結婚を無効にされたうえ斬首された母アン・ブーリンであったそうです。
KING&QUEEN展では、エリザベスが処女王となったのは女王として君臨するために自らを神格化する必要があったと解説がありました。 女性として愛されたいという葛藤と闘いながら、英国プロテスタントの女王としてスペインの無敵艦隊を迎え撃つシーンは最高にかっこいいし、主演のケイト・ブランシェットが綺麗すぎです。
1936年にエドワード8世がアメリカ人女性ウォリス・シンプソンと不倫交際の末に王室よりも愛をとって王位を放棄しました。
突然、英国王となることになった弟アルバート(ジョージ6世)は大変驚いたそうです。
ジョージ6世が即位してまもなく第二次世界大戦に突入。
KING&QUEEN展の音声ガイドでは、海軍にいたジョージ6世は指揮をとってはいないものの対戦で重要な役割を果たしたと解説がありました。
英国王のスピーチはドイツに宣戦布告し第2次世界大戦がはじまる当日の緊急ラジオ放送でのスピーチまでを描いているとのこと。
実は、これから見ます!楽しみ。
#05|興味をとめるな! 読書編
KING&QUEEN展のナビゲーターは
『怖い絵』シリーズの著者 中野京子さんです。
中野さんの著書
『名画で読み解く イギリス王家12の物語』(光文社新書)
が展覧会公式参考図書になっているそうで、いま半分くらいまで読みました。
コアですが人物のエピソードが深まるのでおもしろいです。
追記)・・・その後、少しずつ読み進めていって読了しました。
未婚のエリザベス1世と夫大好きなヴィクトリア女王の対比とか、かならず息子と不仲なドイツ系の王様とか。
王家の歴史は同じ名前が多くて難しいことが多いのですが、こちらはあまり複雑なことを考えずたまにでる毒舌っぽい説明を楽しみました。
まとめ
長くなってしまいましたが、いかがだったでしょうか。
こんなふうに、
展覧会そのもののおもしろさ。
鑑賞後に映画をみて興味を深めるおもしろさ。
本を読んで知識を深めるおもしろさ。
と、KING&QUEEN展にはなんどもなんども楽しませてもらいました。
観に行って本当によかったです。
KING&QUEEN展 グッズ・所要時間・混雑状況
グッズ
気になるグッズはとっても充実しています。
定番のポストカードに、オリジナルのトートバッグや文具などなど。
私のおすすめは、歴代の王・女王のイラストがかわいい縦長のポストカードです。
所要時間・混雑
1時間半~2時間くらいかと思います。
KING&QUEEN展は、ほかの美術展よりも解説をじっくり読む人が多いです。
鑑賞の足取りが皆ゆっくりなのと、
解説の量によっては絵の周りに人がたまるシーンもありました。
チケットは日時指定制なので、会場に対しての人数が多いというよりは、解説読み待ち。
といった感じです。
開催2日目に行きましたが、当日券でも入れたみたいです。
展覧会情報
♦ 展覧会名 | ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展 ―名画で読み解く 英国王室物語― |
♠ 公式サイト | 特設ページ / Twitter |
♦ 会場 | 上野の森美術館(東京) ※本展は巡回はありません |
♠ 会期 | 2020年10月10日(土)〜2021年1月11日(月・祝) ※会期中無休 |
♦ チケット | 一般日時指定 2,000円 一般当日券 1,800円 |
♠ 所要時間 | 1時間半~2時間 |
♦ 混雑状況 | チケットは日時指定なのでそれほどの混雑はなし。 解説読み待ちはあるかも。 |
♠ グッズ | 充実 |
♦ 音声ガイド | 元宝塚歌劇団男役トップ 明日海りおさん ガイドの中で男役も女役も演じてらっしゃいます! デヴィ夫人のエピソードあり。 |
公式サイトをご確認ください。
▼三菱一号館美術館で長年グッズを担当されている株式会社Eastさんのグッズの雰囲気を知るにはこちら
▼来春まで巡回中
▼同じイギリスの展覧会はこちら。
▼イギリスの現代画家の展示もありました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
クリックしていただけたら嬉しいです。
コメント