SOMPO美術館の
『生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて』に行ってきました。
モンドリアンというと
赤や青の四角形が組み合わさった抽象画《コンポジション》シリーズが一番に思い浮かびます。
この展覧会で感激したのは、
抽象画になる前のモンドリアンの絵も良い!
そして、
抽象画は実物で観たほうが絶対、断然良い!
ということでした。
『モンドリアン展』 感想
モンドリアンってどんなひと?
今回の『モンドリアン展』は
モンドリアンの初期の作品から、あの抽象画《コンポジション》シリーズに至るまでの流れが一望できる展覧会です。
モンドリアンの《コンポジション》シリーズは、現代でもいろいろな商業デザインで使用されています。
私が初めてモンドリアンを知ったのは、スマホケースに使われていたのを見たときでした・・・。
ピート・モンドリアン《自画像》1918 デン・ハーグ美術館
●オランダのユトレヒト州で生まれる。
●20歳で美術アカデミーに入学し、伝統的な絵画を学ぶ。
●モチーフのデッサンよりも色彩に興味を持ち、ゴッホに憧れる。
●キュビスムの作品に感銘を受け、1911年(39歳)にパリへ行くことを決意。
●ピカソやジョルジュ・ブラックのような平面的・幾何学的な作品を模索し、やがて「抽象絵画」へ。
●モンドリアン曰く「個別の自然を描くのではなく、そのなかから普遍的な美を抽出する作業である」。
●68歳のとき第二次世界大戦から逃れてニューヨークに亡命。71歳で亡くなるまでの5年間を過ごした。
●「芸術家たちを過去の抑圧から解放する」ために活動し、自由の国アメリカでたくさんの芸術家から愛された。
モンドリアンの代表作「コンポジション」
ピート・モンドリアン《大きな赤の色面、黄、黒、灰、青色のコンポジション》1921 デン・ハーグ美術館
モンドリアンといえば、《コンポジション》シリーズが超有名ですよね。
本展のチラシにはその代表作《大きな赤の色面、黄、黒、灰、青色のコンポジション》が大きく採用されています。
グリッド(線)と色面で構成され、それぞれがバランス良く配置されています。
モンドリアンの"ふつうの"絵画
モンドリアンは、はじめからこのような「抽象画」を描いていたわけではありません。
20歳でアムステルダム国立美術アカデミーに入学して伝統的な絵画を学び、印象派やポスト印象派に強く影響を受けていました。
とりわけ、自分が感じた世界に没頭して生きたゴッホには、生涯にわたってあこがれ続けたそうです。
枯れたひまわりの絵なんて、いかにもゴッホを意識した作品だと思います。
ピート・モンドリアン《枯れゆくひまわりⅡ》1908 デン・ハーグ美術館
1908年、モンドリアンはオランダの先輩画家ヤン・トーロップに出会い、彼の影響で点描画のような技法の作品も制作しています。
この頃からモンドリアンは夏の一時期をオランダ南西部ドンブルグで過ごし、砂丘や建築のモティーフを描くようになりました。
ピート・モンドリアン《ウェストカペレの灯台》1909年 デン・ハーグ美術館
こちらの《ウェストカペレ灯台》や砂丘の連作は、どれもピンクや水色、オレンジなどのパステルカラーで描かれています。
おそらく実物は全く違う色なのでしょうが、モチーフをそのまま描くよりも作品がかもしだす雰囲気の方を重視しているような印象を受けました。
ピート・モンドリアン《陽の当たる家》1909 デン・ハーグ美術館
とくに、この《陽の当たる家》が好きでした。
暖かさや日の光がこのパステルカラーだけで十分に伝わってくる気がします。
すっごく明るくてきれいな作品です。
モンドリアンと「キュビスム」
モンドリアンが抽象絵画を描くまでの過程で、「キュビスム」の影響は欠かせません。
「キュビスム」に強く感銘を受けたモンドリアンは、40歳からの2年間をパリに滞在し、平面的・幾何学的な表現を模索しはじめます。
キュビスムの画家といえば、
パブロ・ピカソや、ジョルジュ・ブラッグがその代表です。
キュビスムの作品例 ※本展にはありません
パブロ・ピカソ《アヴィニョンの娘たち》1907 ニューヨーク近代美術館/ジョルジュ・ブラック《ポルトガル人(移民)》1911-12 バーゼル美術館
あらゆるものを幾何学的図形で描く美術運動のひとつ。
セザンヌの主張「自然のなかのすべての事物は、幾何学的形式(円柱、球、円錐)で構成されている」に影響を受けたピカソやブラッグによって創設され、1907年から1914年までの間に展開。20世紀の美術にもっとも大きな影響を与えた。
単一の視点から見た現実的な空間を描くというルネサンス以来の大前提をくつがえし、芸術家によって任意に構築される独自の空間を表現した。
実物で観たい モンドリアンの《コンポジション》
ピート・モンドリアン《セント色のコンポジションⅢ》1937 デン・ハーグ美術館
モンドリアンの《コンポジション》シリーズは、誰でもパソコンで簡単に描けてしまえそうにも思えますが、実物の絵は油彩画です。
この『モンドリアン展』で感じたのは、
とにかく実物で観るのと画面上で観るのとでは全く違うということ。
ピート・モンドリアン《格子のコンポジション8 – 暗色のチェッカー盤コンポジション》1919 デン・ハーグ美術館
まっすぐなグリッド線ですら、油絵の具で描かれ、凹凸があります。
意図的に意思をもって何かを表現しているのだろうと感じられます。
おわりに
今回の『モンドリアン展』では、
「モンドリアンが《コンポジション》シリーズのような他から逸脱した抽象画を描くようになるまでの軌跡」が一望できたところが、すごくおもしろかったです。
正直、モンドリアンの抽象画以外の作品だってかなり魅力的だと思うのです。
この《夕暮れの風車》など、長く魅入っているお客さんがたくさんいました。
ピート・モンドリアン《夕暮れの風車》1917 デン・ハーグ美術館
でも、モンドリアンの目指したところは
モチーフなんかがなくても誰かに訴えかけられる、もっと普遍的な表現だったといいます。
抽象画ってとっつきにくくてなかなか理解できませんが、今回の展覧会で画家の初期から晩年までの道のりを辿ることで、少しだけ近づけたような気がしました。
とっても楽しかったです。
『モンドリアン展』 情報
グッズ
グッズはかわいいものがいろいろありました。
コンポジション作品の正方形のポストカードは遊び心がありますね。
『あやしい絵展』の時にも飴を買ったので、今回も飴を購入。
模様がとってもかわいいです。
酸っぱ甘くて味も良し。
混雑・所要時間
4月初旬の日曜日午後にいきました。
急遽行くことにしたので予約なしでしたが、当日券でも入場できてゆっくり鑑賞してきました。
ただし、基本的には日時指定予約制なのでご注意ください。
所要時間は、1時間~1時間半程度です。
チケット
オンライン日時指定予約の方が優先されるうえに、少し値段もお安くなっています。
美術館の紙チケットの半券を集めている方もいると思いますが、当日窓口でチケットを購入しても上のようなA4のコピー用紙になります。
事前にオンラインチケットを買った方がおすすめです。
ロッカー
美術館入り口すぐ左側にコインロッカーがあり、硬貨なしで使用可能です。
撮影スポット
展示作品は撮影不可ですが、会場内に撮影パネルがありました。
巡回
東京のあと、愛知へ巡回予定です。
くわしくは次の開催情報をご覧ください。
開催情報
展覧会名 | 生誕150周年記念 モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて |
公式HP | 公式サイト / 美術館Twitter |
会場 | ● 東京会場 SOMPO美術館 |
会期 | 2021年3月23日(火)~ 6月6日(日) |
チケット | 日時指定予約優先 一般 1,700円(オンライン 1,500円) |
所要時間 | 1時間~1時間半 |
混雑 | 当日券でもゆったりと観られました |
音声ガイド | なし |
グッズ | 充実 |
巡回 | ● 愛知会場 会場:豊田市美術館 公式HP: 特設サイト / 美術館Twitter 会期:2021年7月10日(土)〜9月20日(月・祝) |
※お出かけ前に公式サイトをご確認ください
関連情報
モンドリアンについて大まかに知りたいひとは以下のKindleが本当にオススメ。
108円で教えてくれます。
作品もカラーで掲載され、いろいろな画家のシリーズがあります。▼
※4/25から臨時休館
東京国立近代美術館では、5月16日(日)まで『あやし絵展』が開催中です。
怪しい、妖しい、奇しい・・・いろいろなあやしい日本画が満載でした。▼
※4/25から臨時休館
東京藝術大学大学美術館では、5月23日(日)まで『渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-』が開催中です。
一般にあまり知られてこなかったとは思えない超絶綺麗な花鳥画が観られます。▼
※4/25から臨時休館
三菱東京一号館美術館では、5月30日(日)まで『コンスタブル展』が開催中です。
ターナーのライバルとして語られることが多いコンスタブル。
「雲の画家」とも呼ばれるコンスタブルの素朴な風景画に癒されます。
グッズのマグカップがおすすめ。▼
福岡のあと大阪に巡回予定の『ミイラ展』。
ここまでミイラがそろう展示はなかなかないと思います。▼
Twitterでは、気ままに美術や読書についてつぶやいていますのでよかったら見てください。▼
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