2020年9月8日(火)~ 10月18日(日)まで
内藤コレクション展Ⅲ「写本彩飾の精華 天に捧ぐ歌、神の理」
が開催しています。
内藤コレクション展は2019年の秋から始まりました。
第1弾の「ゴシック写本の小宇宙」
第2弾の「中世からルネサンスの写本 祈りと絵」
と感想をブログに書き残したところ、常設展内の小企画展にもかかわらずおおくの方に記事を読んでいただきました。
写本の魅力をあらためて実感した私です。
今回はいよいよ第3弾にして最終章となります。
最後を彩るのは、
これまでとくらべてとりわけ華やかで大型な「聖歌の写本」です。
内藤コレクション展Ⅲ 「写本彩飾の精華 天に捧ぐ歌、神の理」感想
《聖務日課聖歌集零葉: イニシャルAの内部に「キリスト復活」》(一部)1400-25年頃 彩色,金,インク/獣皮紙
写本とは
写本にふれるのは初めてという方のために、
「写本とはなにか」についてざっくりとおさらいしておきましょう。
「写本」とは、羊や子牛など動物の皮から作った紙に人の手でテキストを書き写したもののことです。
活版印刷が発明される前、
中世ヨーロッパのキリスト教世界では、修道院を中心に制作された手写本が、民衆の信仰と知をささえる特権的なメディアでした。
本展:展示風景
膨大な時間をかけて作られる写本は贅沢品であり、特権階級のみ所有が許されるものだったようです。
制作者は彼らを喜ばせるべく写本に華やかな装飾を施しました。
みどころ1:聖歌の写本
最終章である本展の核のひとつとなるのが「聖歌集に由来するリーフ」です。
譜面に金色の音符♩がならんで楽譜のようになった写本でした。
第1弾、第2弾とくらべて大判でさらに彩り豊かなものが多かったです。
《聖務日課聖歌集零葉: イニシアルVの内部に「キリスト昇天」》1440-50年頃 彩色,金,インク/獣皮紙
また、下の写本は遠目で見ると花火のような花の装飾がとてもきれいでした。
《『レオネッロ・デステの聖務日課』零葉: イニシアルPのないぶに「マギが身を持つ預言者」》1441-48年 彩色,金,インク/獣皮紙
毎回思いますが、これすべて人の手で描いているんですよね。
紙の裏表に描かれていますから、画家は失敗できないですね。
なかには下書きのあとのようなものもあって、描き手がとても丁寧に描いているのが分かります。
みどころ2:教会法令の写本
さらに本展のもう一つの核となるのが「教会法令集の写本」です。
教会法令集とは、教父文書、公会議決議、教皇令など、カトリック教会の組織運営や信者たちの信仰・生活に関して定めた法文の書物のことです。
《『グレゴリウス9世教皇令集』(およびベルナルデゥス・パルメンシスの「標準注釈」)零葉: 装飾イニシアル》1300-25 彩色,インク/獣皮紙
余白にびっしり書き込まれているのは注釈で、学者たちが神の理を解き明かそうとした表れだそうで、その細かさは観ておわかりいただけるかと思います。
また、下は16~17世紀半のカスティーリャ王国で、爵位のない貴族のため身分認定書として描かれたものです。
当時、こういった身分証は貴族身分を誇示するために豪華なものがおおく作成されたそうですが、こちらは地味なデザインらしい、、、。
《ガブリエル・デ・ケーロの貴族身分証明書》1540年 彩色,金,インク/獣皮紙
《カスティーリャ女王 フアナ1世の印章》
地味とは。
遊戯王カードにありそうだなとか思ってしまいました。
じゅうぶん華やかだと思いますけどね。
ウサギ・お花・小鳥など、モチーフは意外にもかわいらしくて驚き。
近くで観ても陰影など絵画なみの描き込みでとっても美しかったです。
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内藤コレクション展はこれで終わります。
このレベルの写本が当時どれだけの数作られたのかはわかりませんが、ひとつひとつのページにこれだけの描き込みとこれだけの彩色ですから、貴族しか手にとれないのも納得です。
それが、時代を越え、国境を越え、内藤裕史というひとりの日本人を魅了したのだと思うと、美術・芸術の大きなパワーを感じざるを得ません。
3度にわたる素晴らしい展覧会、鑑賞できて幸せでした。
グッズ・混雑情報など
グッズ
めちゃくちゃグッズの種類が増えていてびっくりでした。
・ポストカードが新しく追加。
・ブックマーカー数種類。
・ブローチ?
・スカーフ?
・コースター(グラスプレート) などなど。
私はポストカードとコースターを購入。
コースターは4種類くらいあったのですが、どれもかわいくて悩みました。
国立西洋美術館の1Fロビーのグッズ売り場で購入できます。
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の特設グッズ売り場のおとなりです。
混雑状況・所要時間
本展:展示風景
日曜日のお昼ごろに行きました。
常設展は日時指定チケットなどなく当日券で入るのですが、だいたいどのエリアも上の画像くらい。
じゅうぶんに落ち着いて鑑賞できました。
この写本のエリアだけならば、30分くらいで観られます。
撮影OK
本展はすべて撮影OKです。
(常設展内は一部の作品をのぞきほとんどが撮影OKです。)
展覧会・関連情報
展覧会名 | 内藤コレクション展Ⅲ 「写本彩飾の精華 天に捧ぐ歌、神の理」 |
公式サイト | 展覧会サイト / 国立西洋美術館Teitter |
会期 | 2020年9月8日(火) ~ 10月18日(日) |
会場 | 国立西洋美術館 常設展内(東京・上野) |
チケット | 一般 500円:日時指定なし または「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の観覧券でご覧いただけます。 |
所要時間 | 長くて30分くらい |
混雑状況 | おそらく混んでいない |
グッズ | 美術館1Fロビーのグッズ売り場にあり 種類が豊富になっていました! |
その他 | 本展内はすべて撮影OK |
▼ゴシック写本展の第1弾はこちら
▼ゴシック写本展の第2弾はこちら
▼ロンドン・ナショナル・ギャラリー展はこちら
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