2022年。
個人的には、転職をして職場環境ががらりと変わった年でした。
外出頻度が格段に減った私ですが
こうして振り返ると、去年と同じくらいには美術館に足を運んでいたようです。
24歳から美術館巡りをはじめて、今年で33歳。
もはや一生ものの趣味になりつつあるなと思います。
私を支えてくれた美術展 2022
2月| フェルメールと17世紀オランダ絵画展
ヨハネス・フェルメール《窓辺で手紙を読む女》1657-59年頃 油彩、カンヴァス ドレスデン国立古典絵画館
2022年最初の美術展は「フェルメール展」。
フェルメールの《窓辺で手紙を読む女》に隠されていたキュービッドが公開されるというのが目玉でした。
キュービッドの存在は、X線調査によって40年以上も前から判明していました。
そこから作品を大切に残すため、ありとあらゆる可能性が話し合われて今日の公開に至ったわけで…。
プロフェッショナルたちの知と情熱の力が集結したのかと思うと、歴史をのちの世へ繋いでいくことの繊細さを感じさせられました。
2月| グランマ・モーゼス展
グランマ・モーゼス《シュガリング・オフ》1955年 個人蔵:ギャラリー・セント・エティエンヌ寄託
フェルメール展と同じ日にハシゴしたのが「グランマ・モーゼス展」でした。
微笑ましくてかわいいい素敵な絵たちをみて、心がぎゅーっとなってばかりの展覧会だったように思います。
たまに、ひたむきに働いて働いて年をとるという人生を考えて恐ろしくなることがあるのですが、グランマ・モーゼスの絵は、そういう冷たくなってしまう心を救いあげてくれる力があるなと思います。
素敵な100年人生、そのものでした。
4月| メトロポリタン美術館展
ジョルジュ・ラ・トゥール《女占い師》おそらく1630年代 油彩/カンヴァス メトロポリタン美術館蔵
「メトロポリタン美術館展」は見ごたえがありました。
大きな美術館の展覧会というのは、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の時もそうでしたが、所蔵作品といい扱っている画家の有名度合といい、美術館の絶対的権威を感じずにはいられません。
有名画家の作品を並べて同じテーマの絵を比較できるなんて贅沢な知識体験ができました
チラシにも採用されているジョルジュ・ラ・トゥールの《女占い師》が特に良かったです。
6月| ゲルハルト・リヒター展
ゲルハルト・リヒター《アブストラクト・ペインティング》2017 油彩・キャンバス ゲルハルト・リヒター財団蔵
私はどちらかというと歴史を感じる古い絵画が好きなので、比較すると現存のアーティストさんの個展を観に行く機会は少ないです。
しかし、この「ゲルハルト・リヒター展」はとってもおもしろく鑑賞できました。
こういった抽象的な作品も、キャンバスが大きくて迫力があってよかったです。
しかも隠れて絵がめちゃくちゃ上手いところがまた格好いいんですよね。
写真に絵の具を直接のせる、フォト・ペインティングというシリーズが特に気に入りました。
思い切って観に行ってよかったと思います。
8月| 特別展アリス
Alice Curiouser and Curiouser, May 2021, Victoria and Albert Museum Installation Image,Tea Party created by Victoria and Albert Museum, Alan Farlie, Tom Piper, Luke Halls Studio©Victoria and Albert Museum, London
小さいころにいちばんよく見ていたディズニー映画が「ふしぎの国のアリス」だったので、「特別展アリス」も気になっていました。
会場の雰囲気や照明が工夫されていて、内容もマニアック過ぎずアリスの世界を味わうにはすごく良かったです。
めずらしく、誰かと一緒に行けばよかったなと思ってしまいました。
個人的にはもうすこしコアなファン寄りの内容でも全然OK。
原作者ルイス・キャロルについて取り上げられた最初のセクションがいちばん楽しめました。
ダリが描いたアリスを観られたのもまた良かったです。
8月| スイス プチ・パレ美術館展
モーリス・ドニ《休暇中の宿題》1906 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
「スイス プチ・パレ美術館展」は私の大好きがたくさん詰まった展覧会で、すっごく楽しかったです。
才能があるのに日の目を見ていない画家たちを世に出す という創設者の信念のもとに集められた、有名ではないけれども素晴らしい作品たちにたくさん出会えました。
ナビ派が描く日常の愛おしい光景、ユトリロの美しいフランス風景。
新たに好きな女性画家シュザンヌ・ヴァラドンも発掘できて、素晴らしい時間を過ごすことができました。
1998年以来休館しているプチ・パレ美術館ですが、いつか再開してジュネーヴの地で見られたら素敵だなと思うばかりです。
10月| ピカソとその時代展
パブロ・ピカソ《女の肖像》1940 油彩・カンヴァスに貼った紙 ベルクグリューン美術館蔵
20世紀美術、とくにピカソ、クレー、マティス、ジャコメッティの4人をピックアップした展覧会だったのが、「ピカソとその時代」展でした。
ピカソやクレーの作品をこれだけ一度にまとめてみたのは初めてで、すごくすごく貴重な体験ができました。
ナチスドイツや2つの世界大戦と不穏な時代に生み出されてきた作品たちにふれると、繊細で美しいだけじゃなく何か力強いメッセージがあるような気がして、ずっと魅入ってしまうような作品が多かったと思います。
11月| パリ・オペラ座展
エドガー・ドガ《バレエの授業》1873–1876年 油彩・カンヴァス オルセー美術館蔵
憧れのパリ・オペラ座。
学生時代にフランス旅行に行ったとき、西洋の雰囲気にのまれて入り口で引き返してしまった苦い思い出のあるパリ・オペラ座。
芸術の聖地ともいえるオペラ座の長い歴史を知ることができたのが「パリ・オペラ座展」です。
バレエもとてもすきなジャンルなので、昔のトゥーシューズが見られて嬉しかったです。
あんなに心もとないポワントには驚きました。
11月| ヴァロットン-黒と白 展
フェリックス・ヴァロットン《ブタ箱送り(息づく街パリⅢ)》1893年 ジンコグラフ 三菱一号館美術館蔵
抜群のデザインセンスを目の当たりにしたのが「ヴァロットンー黒と白展」でした。
人物描写、画角、構図、黒と白のバランス。
100年以上前の作品なのに古臭さを一切感じない所にヴァロットンの天才さを実感させられます。
展示作品のほとんどがモノクロにも関わらず、絵画欲を十二分に満たしてくれた展覧会でした。
12月|大竹伸朗展
大竹伸朗《東京-京都スクラップ・イメージ》1984 公益財団法人 福武財団蔵
2022年最後に観に行ったのは「大竹伸朗展」です。
閉店したスナックの扉、もらった写真、お店の看板など、既にそこに存在しているモノを集めてきて組み合わせて作品にしてしまう、大竹ワールドが全開でした。
ネオンの光やブラックライトに照らされた作品、独特のレトロな世界観がまた楽しくて、アトラクションを体験しているかのようなワクワクする展覧会でした。
おわりに
2022年で32歳になりました。
嫌で嫌で仕方がなかった職場から解放され、今いる場所では自分の理想としている働き方に近づけたような気がします。
とはいえ仕事は仕事。
それだけでは心がカサつくばかりなので、私にとってはやっぱり絵を観る時間というのはかけがえのないものです。
最近では、黙っていても新しい情報が自分の意思とは関係なくどんどん入ってくるこの情報社会に疲れてきたので…
お役立ち情報にくらべて、美術の世界って未来への有効性は低いですよね。
知らなくても生きていくうえで困らない、万人には役に立たないともいえてしまう分野でしょう?
でもだからこそ癒されるんだよな、とこの頃改めて思います。
引き続きちょこちょこ美術展に出かけていくと思うので、感想ブログは続けていきたいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
2023年もどうぞよろしくお願いいたします。
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