2021年。
世間はコロナありきで、なんとか回っていくようにみんなが頑張っている。
そんな年だった気がします。
私はといえば、やっぱり時間を見つけては美術展に足を運んでいました。
個人的には仕事で異動があり ほとんど毎日気疲れしている年でもあったので、美術館での時間がなんとありがたかったことか。
絵の世界が心の支えであったことに、間違いありません。
私を支えてくれた美術展 2021
2月| 眠り展
ペーテル・パウル・ルーベンス《眠る二人の子供》1612-13年頃 油彩/板 国立西洋美術館蔵
2021年最初の美術展は「眠り展」から始まりました。
展覧会の看板では、このルーベンスの《眠る二人の子供》の絵が使われていたのが印象的です。
テーマの珍しさに惹かれたのもあります。
そしてなんとなく、癒してくれそうだなという期待もありました。
休息の眠り、生を終える眠り、次に歩むための眠り。
いろいろな眠りの作品に触れました。
コロナにも終わりがみえずまだまだ続きそうなどんよりした現実を、静かに、落ち着いて、しかし強かに生きていこう。
そんな風に背中を押されたような気がして元気をもらえました。
3月| 没後70年 吉田博 展
吉田博《タジマハルの朝霧 第五》1931年 木版/紙 個人蔵
「吉田博展」は雑誌で開催を知ってから絶対に観に行きたいと思っていた美術展でした。
どうしてもこれが版画だとは信じられなかったからです。
繊細すぎるタッチ、陰影のグラデーション、そして透明感。
実物を観てもなお信じがたいくらい綺麗でした。
版画というと、どうしても日本的な題材を扱うイメージがあったので、こういう海外を描いた作品は西洋画ファンの私には大変楽しかったです。
山を愛し、旅を愛した吉田博の世界が満載。
個人蔵作品をたくさん観られてプレミアムな体験ができました。
3月| テート美術館所蔵 コンスタブル展
ジョン・コンスタブル《ブライトン近郊の風車》1824年 油彩/カンヴァス テート美術館蔵
「コンスタブル展」で過ごす時間は穏やかでした。
コンスタブル作品をまとめてみたのは初めて。
過去にぽつぽつと見たことがある絵画はどれも渋くて、さほど印象に残っていなかったのが正直なところでしたが、その認識はこの展覧会でがらりと変わりました。
自分が親しんだ思い入れのある風景を
大げさに誇張することもなく自然のありのままに描いたコンスタブル。
あまり遠くに出かけられない2021年において、
自分の身近な風景を素朴ながら愛おしい存在に想わせてくれる力がありました。
4月| 渡辺省亭 -欧米を魅了した花鳥画-
渡辺省亭《牡丹に蝶の図》(部分)1893(明治26)年 個人蔵
「渡辺省亭展」も絶対に観に行くと決めていた美術展です。
雑誌で見たこの《牡丹に蝶の図》に一目惚れでした。
日本特有のべた塗りではなく(それもまた好きなのですが)、グラデーションが効いていて透明感があって繊細すぎるほど繊細。
吉田博展にも共通する和洋ミックスな日本画が素晴らしかったです。
実物は、ずっと観ていられる美しさでした。
4月| あやしい絵展
橘小夢《水魔》1932年 プロセス版/紙 個人蔵
「あやしい絵展」は静寂なお化け屋敷のようでした。
人間ならざる者、破滅のマドンナ、女の嫉妬、、、。
オスカー・ワイルドの『サロメ』をみて、原作を読んだりもしました
綺麗とか技術がすごいとか、
そういうことを抜きにしても、じーっと観てしまうような求心力のある作品が多かったです。
こういう絵画のあやしさ・怖さなら、いくらでも体験したいですね。
4月| モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて
ピート・モンドリアン《乳牛のいる牧草地》1902-5年 デン・ハーグ美術館蔵
「モンドリアン展」で、四角くないモンドリアン作品を初めてみました。
どれも写実ではなく抽象寄り。
暖かみのある印象派のような作品から、パステルで可愛らしい色づかいの点描画まであって、知らなかったモンドリアンを知れた、大きな出会いだったと思います。
モンドリアンがあの有名な四角い《コンポジション》を描くに至るまでの絵柄の変遷を一望し、彼にとても興味がわいて、作品集を見るまでになりました。
10月| イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜
クロード・モネ《睡蓮の池》1907年 油彩/カンヴァス
仕事で5月に異動があり、新しい部署で気疲れやらイライラやらで精神が疲弊しきっていました。
でも都内でコロナがひどくなってきて、美術館巡りも控えることにして。
やっと数カ月ぶりに観に行ったのがこの「印象派 光の系譜展」です。
どの絵も発光しているんじゃないかというくらいに輝いていて素晴らしかった。
そして、レッサー・ユリ―という画家も知りました。
心が晴れるとはこのことかと思いました。
11月| ゴッホ展
フィンセント・ファン・ゴッホ《麦束のある月の出の風景》1889年 油彩/カンヴァス クレラーミュラー美術館蔵
「ゴッホ展」、本当に良かった。
感動しました。心がぎゅっとなりました。
私自身が
年齢を重ねるほどに独りが居心地よくなり、逆にコミュニケーションへの苦手意識が強まって、より内省的になってきて、勝手にゴッホにシンパシーを感じたのかもしれません。
後半に病院で描かれた庭の絵。
強く真っすぐな太陽の光の下で働く農夫。
夜のプロヴァンスを照らす星々。
精神をすり減らす傍らで、
自らの命の灯を作品に移していくようにエネルギーに満ちた絵を生み出すゴッホに惹かれてなりませんでした。
観に行けて幸せでした。
ありがとう、ありがとう。
11月| イスラーム王朝とムスリムの世界(博物展)
<ラスター彩アルハンブラ壺> スペイン 19世紀 陶製
滞在時間が少ししかとれなかったので記事にはしていませんが、博物展にも行きました。
東京国立博物館東洋館で行われた「イスラーム王朝とムスリムの世界」。
装飾品も金ぴかで豪華。
彩色はターコイズ色が鮮やかで美しかったです。
おそらく今後の私の人生で東アジアには行けないだろうなと思うので、こういう貴重な機会は逃したくないものです。
宗教とからんだ独特の象形がおもしろく、歴史的なことは詳しくなくても楽しめました。
12月| ハリーポッターと魔法の歴史 展
ハリー・ポッターシリーズは思い出とともにずっと好きな作品です。
発売初日に大好きなおばあちゃんが買ってきてくれて、その存在を知りました。
当時9歳。
人生で初めての長編小説だったような気がします。
外国の名前がたくさん出てきて戸惑ったことも覚えています。
私にとってハリー・ポッターは「おばあちゃんが買ってくれる特別な本」です。
「ハリー・ポッターと魔法の歴史展」は、もしや昔は本当に魔法ってあったのでは?と思うような展示品ばかり。
賢者の石の作り方、錬金術の本、魔女の鍋、お茶の葉占い。
魔法っていくつになっても惹かれますね。
すっかり大人になった今でも、魔法使いになれるものならなりたいです。
本展は予定では2022年3月27日(日)まで開催します。
ハリポタファンもそうでないひとも楽しいと思います。
おわりに| 心が整う美術館
2021年、31歳になりました。
自分の体の変化、親の年齢、いろいろなことを考え出しては止まらなくなるような日が増えた気がします。
日曜日の夜とかね。
コロナに限らず、
頑張ってもむくわれないような気がするな。
この生活はいつまで続くのかな。
この生活はいつまで続けられるのかな。
そんなふうにひしひしと心が疲れていくのを感じるなかで、美術館に足を運ぶことでどれほど心が整ったことか。
気持ちをフラットにしてくれたことか。
美術館を開いてくれて、
素敵な展覧会を開催してくれて、
ありがたくて仕方のない一年でした。
2022年もお世話になります。
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まだまだ大変な状況は続きますが、どうかご自愛ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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