SOMPO美術館の
「スイス プチ・パレ美術館展 -印象派からエコール・ド・パリへ」に行ってきました。
スイスのジュネーヴにある「プチ・パレ美術館」は、19世紀後半から20世紀前半のフランス近代絵画を中心に 豊富な美術作品を収蔵しています。
1998年に休館して以来 現地でも一般公開されていない傑作と対面できる、またとない機会です。
個人的にも、いままで知らなかったり観たことがなかった画家たちの作品にたくさん出会えて楽しかったです。
新たな推し画家もできたので、大・大・大満足の展覧会でした。
「スイス プチ・パレ美術館展」 感想
プチ・パレ美術館のコレクション ― 才能ある無名画家
スイスのジュネーヴにある「プチ・パレ美術館」は、実業家オスカー・ゲーズ氏(1905-1998)のコレクションを公開するために設立されました。
19世紀後半から20世紀前半のフランス近代絵画を中心とする 豊富な美術作品を収蔵しています。
ケーズ氏が掲げた、才能があるのに日の目を見ていない画家たちを世に出すという信念のもと、ルノワールやユトリロといった有名画家の作品だけでなく、それまであまり世に知られてこなかった魅力あふれる画家たちの作品が数多くコレクションされているのが特徴です。
1998年以来ずっと休館している同館。
「スイス プチ・パレ美術館展」は、
現地でもなかなか見ることができない貴重なコレクションをとおして、19世紀から20世紀へと転換してゆくフランス絵画の流れ ― 印象派、新印象派、ナビ派、フォーヴィスム、キュビスム、エコール・ド・パリ という激流をたどる展覧会です。
会場にはガイド冊子があり、ひとつひとつ時代の特徴をつかみながら各セクションをたどって行けます。
大規模展ではないけれども、どれも味のある惹きこまれる作品ばかり。
私のように、新しい推し画家がきっと見つかると思います。
愛らしい子どもたち
印象派以降の画家たちが描く子どもの絵がすごく好きです。
筆のタッチや色づかいの効果かもしれませんが、すごくふわふわして可愛らしく描かれているからです。
「スイス プチ・パレ美術館展」でも、そんな愛おしい子どもたちやその家族を描いた作品が展示されています。
ギュスターヴ・カイユボット《子どものモーリス・ユゴーの肖像》1885 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
ギュスターヴ・カイユボットの《子どものモーリス・ユゴーの肖像》は、印象派のセクションで展示されている作品です。
描かれたのは朝の場面なのでしょうか。
部屋に差し込む陽の光と静かで透き通おる空気感が 青く透けるような子どもの肌に反射して、神秘的な光を放っているように見えました。
モーリス・ドニ《休暇中の宿題》1906 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
「スイス プチ・パレ美術館展」のチラシにも使われているこちらの作品は、モーリス・ドニの《休暇中の宿題》。
ナビ派のなかでも理論派として知られ、宗教に強い関心を持っていたドニが大事な主題としたのは、自身の妻と子どもたちでした。
お揃いの赤い洋服を着た三人娘と妻。
チェックのテーブルクロスに窓際の花、差し込む日差し。
何とも幸せなフランスの家族のひと時が見事に切りとられていて、観ているこちらまで暖かい気持ちにさせてくれる作品です。
テオフィル=アレクサンドル・スタンラン 猫と一緒の母と子 1885 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
猫と女の子は、アール・ヌーボー画家 テオフィル=アレクサンドル・スタンランの大好きだった主題です。
この黄色がかった色づかいは、同世代のロートレックの作品を思い出しました。
トゥールーズ=ロートレック《ムーラン・ルージュのイギリス人》 1892年 三菱一号館美術館蔵 ※本展にはありません
テオフィルもロートレックと同じようにポスター制作も請け負っていたので(黒猫のポスターが有名)、互いに影響し合っていたのかもしれません。
ここに挙げた3つの子どもの絵は、どれも誇張のない素朴さや親しみやすさがにじみ出ている気がして、大好きなテーマだなと改めて思いました。
ほっこりと幸せな気持ちになる作品たちでした。
耽美な女性たち
フェリックス・ヴァロットン《身繕い》1911 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
「スイス プチ・パレ美術館展」では、女性の肖像画作品もいくつか観ることができます。
画家によって全くテイストが違うのに、どの女性も美しくて印象に残るものばかりでした。
目線まで計算されていて抜かりがないというか…。
想像力を掻き立てる女性たちです。
ジョルジュ・ボッティーニ《バーで待つサラ・ベルナールの肖像》1907 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
サラ・ベルナールといえば、ミュシャの絵に登場する女神のようなイメージが頭に焼き付いていましたが、こうして別の画家の目をとおして観てみると、また別の魅力がありますね。
人間味のある、リアルな美しさがあります。
モイズ・キスリング《赤毛の女》1929 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
また、モイズ・キスリングの作品は強烈で、ものすごく印象に残っています。
「スイス プチ・パレ美術館展」には合計4点のモイズ作品が出展されていますが、奇抜な色を使っているわけでもないのに、1色がすごく目立って見える不思議な味のある絵画で、すごく好きでした。
絵柄も独特で、独自の表現がなされています。
モイズ・キリング展、とかあれば、是非行ってみたいです。
"フォーヴィスム"なフランスの街並み
"フォーヴィスム"とよばれる画風で描かれた風景画は、穏やかななかにも色のパワーを感じる力づよい作品が多かったように思います。
アンリ・マンギャン《ヴィルフランシュの道》1913 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
フォーヴィスムの特徴は、大胆なタッチと鮮やかな色づかいです。
フォーヴィスムという呼称は、粗めのタッチと色彩が「野獣(フォーヴ)」のようだと評されたことが由来らしいです。
著名画家としてはアンリ・マティス、アンドレ・ドランなどがいますが、交友関係を通じて一時的にブームとなった動きで、2年余りで静まった流行だったのだそうです。
モーリス・ド・ヴラマンク《7月14日 踏切、パリ祭》1925 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
会場ではとくに、モーリス・ド・ヴラマンクの《7月14日 踏切、パリ祭》が目立っていたように思います。
空の鮮やかな青と赤い屋根や国旗のコントラストが美しかったです。
勢いのあるタッチが、濃くて強めの絵具を引き立てています。
ラウル・デュフィ《マルセイユの市場》1903 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
私は、ラウル・デュフィの《マルセイユの市場》が好きでした。
大胆に描かれているのに、食べ物がとてもおいしそうに見える不思議。
市場の賑わいが音になって伝わってくるようで、陽の光の暖色がまたそれをセンチメンタルに浮かび上がらせています。
ユトリロの母、シュザンヌ・ヴァラドン
この「スイス プチパレ美術館展」に行って何より良かったのが、新しく好きな画家ができたことです。
シュザンヌ・ヴァラドンという女性画家の作品《暴かれた未来、あるいはカード占いの女》が、とにかくめちゃくちゃ美しくてびっくりしました。
シュザンヌ・ヴァラドンは、モンマルトルでロートレックやルノワール、ドガなどの画家たちのモデルをやりながら独学で絵を学んだ女性であり、あのユトリロのお母さんです。
シュザンヌ・ヴァラドン《暴かれた未来、あるいはカード占いの女》1912 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
風景画がおおい息子のユトリロとは異なり、モンマルトルの娼婦を主題にすることが多かったらしく、女性を美化しない力強い作風になっています。
この《暴かれた未来、あるいはカード占いの女》は、
輪郭線が緑に近い色で描かれていて、女性の肌ひとつとっても青色や桃色など複雑な色合いで表現されています。
背景の花柄の壁紙は実物でみるともっとターコイズのような鮮やかな水色で、それがまたすっごく綺麗でした。
本展では、シュザンヌの作品であともうひとつ《コントラバスを弾く女》が展示されているのですが、そちらもとっても良かったです。
モーリス・ユトリロ《ノートル=ダム》1917 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
会場では、親子作品が共演。
母・シュザンヌの作品2点のとなりには、息子・ユトリロの作品が並びます。
ユトリロは母親とはテイストがことなるものの、色づかいが複雑なのは共通している気がします。
美しく可愛いフランスの風景画を描く画家で、実物を観ると人気なのがとってもよく分かりました。
この親子の色づかいは個人的に大好きな部類で、並べて観られるなんて贅沢な時間を享受できました。
まとめ
ルイ・ヴァルタ 《帽子を被った女の肖像》1895 油彩、カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
この他にはキュビスムの作品なんかもあって、フランスのいろいろな表現方法が一度に観られる構成になっています。
知らない画家だけど印象に残る作品がたくさんあり、いろいろな発見ができた展覧会でした。
色彩が豊かで綺麗だったり可愛い作品も多いので、頭を空っぽにして、ただぼーっと観に行くだけで癒されると思います。
すっごく楽しかった!
行ってよかったです。
「スイス プチ・パレ美術館展」 情報
グッズ
「スイス プチ・パレ美術館展」のグッズは、そこまで種類が豊富というわけではないものの、ポストカードやクリアファイルなどの定番のものはそろっています。
私もいくつか買ってきました。
グッズ売り場は会場内にありますので、お財布を持ってお入りください。
ポストカード2種
まずはポストカードです。
種類は「スイス プチ・パレ美術館展」で展示されていた作品のカードと、プチ・パレ展関連作品のカードの2種類があります。
プチ・パレ展のポストカードは、シュザンヌ・ヴァラドンのカードがなかったのはちょっと残念でしたが、それ以外の目を惹いた作品はカードになってくれていました。
プチ・パレ展関連のポストカードというのは、プチ・パレ展にでてくる画家と、同時代の画家の作品のカードのことです。
普段は展覧会に関係のないものはあまり買わないのですが、このシャガールのカードが綺麗だったので思わす一枚買ってしまいました。
プチ・パレ展のポストカードは 165円(税込)。
プチ・パレ展関連のカードは 120円(税込)です。
サクサク香ばしい有平糖
あとはお菓子。
有平糖(あるへいとう)を買ってみました。
いくつパッケージの絵柄があって、ポストカードで買っていないものを選びました。
こういう和菓子はなかなか普段は買わないけれども、美術展のグッズになっていると挑戦したりしています。
うすい水飴でコーディングされた中にきな粉が入っていて、味はきな粉棒みたいでとってもおいしかったです。
「サクサク香ばしい有平糖」は 486円(税込)です。
混雑状況・所要時間
8月の夏休み真っただ中(平日夕方前)に行きました。
お客さんはあまりおらず、ゆっくり自分のペースで観ることができました。
所要時間は1時間~1時間半くらいです。
チケット
美術館ホームページに「事前予約は不要となりました」とありましたので当日券を利用しまして、待ち時間ゼロで入ることができました。
もちろん事前予約もできます。
窓口でチケットを買ったら、紙チケットをくれました!
思わぬサプライズで、嬉しかったです。
SOMPO美術館には何度か行ったことがありますが、いつもはA4のコピー用紙なので、紙チケットをもらったのは初めてです。
東京展では、当日券と事前予約券でチケットのお値段が異なります。
当日券は 一般 1,600円(税込)、
事前予約券は 1,500円(税込)です。
ロッカー
SOMPO美術館の建物入り口を入ってすぐ左に無料のロッカーがあります。
付属の鍵で開ける方式で、100円玉は不要です。
フォトスポットあり
フォトスポットとされているのは、この建物外の大きなポスターのところです。
また、会場内では「スイス プチ・パレ展」の作品は撮影できませんが、ゴッホの《ひまわり》を含むSOMPO美術館の所蔵作品3点が撮影可能でした。
SOMPO美術館に来ると毎回思いますが、この《ひまわり》が日本にあるというのは、本当にすごいことですね。
音声ガイド
音声ガイドは 600円(税込)で、24作品の解説があります。
音声ガイドのラインナップ一覧表はなかったのですが、代わりに先にも述べた『美術の流れ鑑賞ガイド』が配布されます。
ガイドは美術館ホームページからPDFをダウンロードすることもできます。
巡回
「スイス プチ・パレ美術館展」は2021年から巡回している展覧会です。
コロナの影響で中止になった地域もあるようですが、私の知る範囲では以下の地域を巡回し、現在の東京展が最終となります。
地域によって、展覧会の副題が異なっているようです。
●滋賀県 佐川美術館
「スイス プチパレ美術館展 - 珠玉のフランス近代絵画」
会期:2021年9月14日(火)〜 11月7日(日) 終了
●福島県 郡山市立美術館
「スイス プチパレ美術館展 - ルノワールからエコール・ド・パリへ」
会期:2022年2月11日(金・祝)〜 3月27日(日) 終了
●静岡県 静岡市美術館
「スイス プチパレ美術館展 - 花ひらくフランス絵画」
会期:2022年4月9日(土)〜 6月19日(日) 終了
●東京都 SOMPO美術館
「スイス プチパレ美術館展 -印象派からエコール・ド・パリへ」
会期:2022年7月13日(水)〜 10月10日(月・祝)開催中
開催概要
展覧会名 | スイス プチパレ美術館展 -印象派からエコール・ド・パリへ - |
東京展 | 2022年7月13日(水)〜 10月10日(月・祝) ▶ SOMPO美術館 ▶ 美術館Twitter:@sompomuseum |
混雑状況 | 平日夕方前は、あまり混んでいませんでした。 |
所要時間 | 1時間~1時間半 |
チケット | 当日券:一般 1,600円(税込) 事前予約券:一般 1,500円(税込) |
ロッカー | あり(無料・100円玉不要) |
音声ガイド | 会場レンタル:600円(税込) |
撮影スポット | 会場内外にあり |
グッズ | 展覧会特設ゾーンは小規模 |
※お出掛け前に美術館公式サイトをご確認ください
※開催地に指定がないものはすべて東京展の情報です
おまけ | 次に行きたい美術展
次はどの美術展に行こうかな、と計画中。
美術館でたくさんチラシをもらってきました。
何回行けるかわからないけど、11月から始まるSOMPO美術館の「おいしいボタニカル・アート展」と、年明けに東京都美術館で開催予定の「エゴン・シーレ展」など、気になっている展覧会がたくさんあります。
楽しみだなー♪
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▼ 東京では「特別展アリス」が開催中です。
ご家族、お友達、デートで行っても楽しめるアリスの世界を満遍なく満喫できる展覧会になっています。
東京のあとは大阪に巡回予定です。
▼ 東京では「ゲルハルト・リヒター展」が開催中です。
抽象画のイメージが強いリヒターの作品は、一見すると難しいと思われるかもしれませんが、やっぱり迫力がすごくて体感するだけでも楽しいですよ。
大型作品から写真のような油絵、写真に絵の具を落としたオイル・オン・フォトなど様々な作品が堪能できます。
▼ 宮城では「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」が開催中。
市民の国・オランダの癒しの風俗画がたくさん展示されていますし、なによりフェルメールのキューピッドは観て後悔のない神聖なオーラのある作品でした。
▼ 「スイス プチ・パレ美術館展」の雰囲気が好きなら、三菱一号館美術館の展覧会は好きだと思います。
過去の展覧会はこの辺ですが、10月下旬からは今回の《身繕い》する女性の絵でご紹介したフェリックス・ヴァロットンの展覧会が開催されるので楽しみにしています。
▼ SOMPO美術館の過去の展覧会はこちら。
結構めずらしい企画展を開催してくれるし、アクセスが良いのでお世話になっている美術館です。
▼ Twitterでは、気ままに美術や読書についてつぶやいていますのでよかったら見てください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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