「画家が見たこども展」に行ってきました。
本展を楽しむポイントは
印象派に続く世代の芸術家グループ
「ナビ派」です。
18世紀頃までの西洋において、子どもは「不完全な大人」とみなされていました。
しかし、ナビ派の画家たちが描く子どもは、
天使のように可愛く、優しく、力強く、そして時に辛辣な側面をもつ存在として描かれています。
『画家が見たこども展』感想・見どころ
ナビ派
19世紀末のパリで活動した「ナビ派」は
印象派に続く世代の芸術家グループです。
モーリス・ドニ《雌鶏と少女》1890年 国立西洋美術館蔵
ゴーガンから指導を受けた
●ポール・セリュジエ(1864-1927)
を中心に、同じパリ画塾の生徒を誘って結成したグループで、
●ピエール・ボナール(1867-1947)
●モーリス・ドニ(1870-1943)
●エドゥアール・ヴュイヤール(1868-1940)
●フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)
この5名がナビ派の主要メンバーです。
ナビ派の画家たちは都市とその活気に魅了され、パリの街中で繰り広げられる光景を注意深く観察して絵を描きました。
「子ども」の変化とナビ派
さて、西洋では伝統的に「子ども=不完全な大人」と考えられていました。
それが、18~19世紀のロマン主義やレアリスムの時代をとおして、「子どもは大人とは異なる独立した人格を持つ存在」として考えらるようになり、西洋社会における子ども観が変化していきました。
エドゥアール・ヴュイヤール《乗り合い馬車》1895年頃 ハマー美術館蔵
ナビ派の画家たちが描く「子ども」は、
天使のような愛らしさ、優しさ、力強さ、時には辛辣な一面がそのまま素朴に描かれています。
展覧会撮影スポット①/2 フェリックス・ヴァロットン作品
パリの街に芸術性を見出していたナビ派の画家たちにとって、街中に登場する「子ども」は、描かずにはいられない近代都市の重要な登場人物だったのでしょう。
家族の情景の暖かさ
ナビ派の画家たちは自分を取り巻く家族をテーマにした絵画も数多く描きました。
ピエール・ボナール《子どもたちの昼食》1897年頃 ナンシー美術館蔵
そのどれもが愛情に満ち、子どもたちを愛しく思う気持ちが絵に表れていて、観ている私をも幸せな気持ちにさせてくれました。
モーリス・ドニ《子ども部屋(二つの揺りかご)》1899年 個人蔵(遺族)
上の作品を描いたモーリス・ドニは、自身の9人の子どもたちを度々題材にしました。
幼い兄弟たちが見つめ合う一場面。尊いですね。
会場に飾られたこの絵と並ぶ4点のドニ作品ですが、じつは額縁もすっごくかわいいので注目してみてください。
ピエール・ボナール《家族の情景》1893年 三菱一号館美術館蔵
ボナールの《家族の情景》はぷっくりほっぺの赤ちゃんと両親の心温まるシーンですしょうか。
ボナールは「日本かぶれのナビ」と呼ばれるほどの親日家で有名です。
縦長のキャンバスや平面的なタッチは日本の浮世絵に大きな影響を受けています。
エドゥアール・ヴュイヤール《青いベッドにいる祖母と子ども》1899年 ヴィンタートゥール美術館蔵
私が本展でとくに好きになったのは
エドゥアール・ヴュイヤールの《青いベッドにいる祖母と子ども》です。
奔放に動き回る赤ちゃんを見守るおばあちゃんが、私のおばあちゃんを思い出します。
作者のヴュイヤールは生涯独身で子どもを持ちませんでしたが、姉夫婦の娘アネットがいる光景を度々描いたそうです。
まとめ|「子ども」の魅力
音声ガイドの最後で紹介されたボナールの言葉が印象的だったので書き残します。
グッズ情報
定番のポストカードは"こども展"ならでは。
すべてにぬり絵が付いていました。
オルディ・ルドンの《グラン・ブーケ》を所蔵しています。
展覧会概要
展覧会名 | 開館10周年記念 画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン |
公式サイト | 特設サイト / 美術館Twitter |
会場 | 三菱一号館美術館 |
会期 | 2020年2月15日(土)~ ※会期再延長 |
チケット | 一般 1,700円 完全予約制 |
所要時間 | 1時間半程度 |
音声ガイド | 声優 内田雄馬さん |
グッズ | 充実ラインナップ。 300円ガチャと500ガチャが全4種類。 |
撮影スポット | ●撮影スポット①/2 ●撮影スポット②/2 |
関連情報
▼ナビ派を知るならこの本
▼ゴッホやボナールなどの後期印象派や「ナビ派」の画家たちから色彩や画法の影響を受けたとされるピーター・ドイグの展覧会。幻想的できれいな絵画が好きなら絶対におすすめです。
▼同館の秋の企画展は大好きなルドン。絶対に行きたいです。
▼世界でいちばん有名な《ひまわり》が日本に来ています。
▼日本にもゴッホの《ひまわり》を持つ美術館があります。
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